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039 待ち時間の楽しみ

急にちょっとした空き時間ができたらどうしますか?
私の友達(および母)は時間にルーズで、ランチやカフェに行く約束をしても、当日よく遅刻をします。私は、結構この待ち時間が好きです。
あわてることが苦手な私ですが、待つのは好きなのです。

今回はそんな待ち時間の楽しみをご紹介します。

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五分から十分の短い待ち時間の場合は、基本的に約束の場所でそのまま待っています。そして、私と同じように待ち合わせをしている人や周囲の建物をながめます。

たとえば、同じ待ち合わせをしている人でも、ゆったりと何をするでもなく待っている人もいれば、せわしなくスマートフォンを操作したり電話で「ねぇ今どこなの」と問い質している人もいます。

その人たちの状況を想像するのです。
ゆったりと待っている人は、待ち合わせ時間よりだいぶ早く着いたのかしら、それとも約束の時間をあまり気にしない人なのかしら。とか。
スマートフォンさんは、もしかしていつも同じ相手に待たされているのかも…私とおんなじですね。それとも今日の予定は映画で、もうすぐ上映だからあわてているのかしら。あっ走ってきたあの青年が待ち合わせ相手かな。と思いきや隣の方のお相手でした。とか。

知らない人だけれど、たまたまこの日この時間この場所で待ち合わせしている人たち。つかの間の同じ時間を過ごす仲間です。その人たちのことを考えているとあっという間に時間は経ちます。

また、周囲の景色を観察することもあります。
普段歩いている場所でも、意外と周りのものが見えていないことがあるからです。
高いビルにはたくさんのお店や会社が入っていますし、横断歩道の脇に黄色い花が植えてあることもあります。

お店の名前が読めない…フランス語かな、とか、この会社はどんな事業をされているんだろうとか。
こんなところにマリーゴールドが!よく見たら少しだけクローバーもあるのね。クローバーはどこかから飛んできた感じね、とか。
今日の空はいつもより高く見えるなぁ。雲も少なくていい感じ。ランチはオープンテラスがあるあのカフェに決まりね、とか。
知っている場所のはずなのに発見がたくさんあっておもしろいものです。

一度、職場の方に私が待ちぼうけをくわされているところを見られたことがあって、
「一人だけ斜め上をぼんやりと見ていて、ちょっとやばそうに見えた」
と笑われました。私は「やばそう」という言葉の意味がいまいちわからないのですが、たぶん変てこに見えたのでしょうね。
これをするときは、やばそうに見えないように要注意です。

三十分以上の盛大な遅刻が発覚した場合は、友達にメールで断りを入れて近くの喫茶店で待たせてもらいます。友達とお出かけをする前から足を棒にしてはいけませんから。

喫茶店に入ると魅力的なメニューがたくさんありますが、ぐっと欲望を抑えて紅茶のみお願いします。そして文庫本(短編集かエッセイが好ましい)を読んで待ちます。待ち時間に長編小説を読まない理由は、私の場合、なかなか小説から戻って来られないからです。友達がせっかく急いで来てくれたのに、「ちょっと今事件が起きたんで」などと言えません。短編小説やエッセイで琴線に触れるものがあれば、付箋を貼ったりメモをとったりして、興味深い時間を過ごします。
出てきた紅茶が好みであれば、その香りや味を記録するのもちょっとした思い出になります。

友達が「遅れてしまって本当にごめんなさい」と来たときに、遅れた理由を聞くよりも「待ち時間にこんな素敵な言葉(あるいは景色、人)と出会えたのよ」とお話する方がずっと楽しいと思います。

みなさんは待ち時間をどのように過ごしますか。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。



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