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105 私の本棚-1月編

たとえば、なにかに成功したとき、あるいは失敗したとき、こんな言葉が思い浮かびます。

「君は何を学んだ?」
大気が微かに揺れ、風が笑った。
-『風の歌を聴け』 村上 春樹著より

あるいは、不意にひとの心が見えたとき、こんな言葉が聞こえます。

あんなふうに落ち着いて、白くて、誰もがじんとして泣きたくなるような明るくてきれいな場所があなたの中にあるのね。
―『サンクチュアリ』 吉本 ばなな著より

こういったときに、これまで読んできた本が私の血肉になっていると感じます。
言葉は、すぐに力にならなくても、きちんとどこかにきざまれています。

今回は2020年1月に読んだ本たちをご紹介します。
今月はやや仕事に追われてしまい、詩集多めです。

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1 『美しい街』 尾形 亀之助著/夏葉社
尾形さんの詩には、大学生の頃から親しんでおり、図書館でよくながめていました。
美しくすこしへんてこな言葉たちは私の心にいつも寄り添ってくれました。
本屋さんで探してもなかなか見つからない詩集なので、町の小さな本屋さんで見つけた時は運命を感じました。

いつまでも寝ずにいると朝になる
眠らずにいても朝になったのがうれしい
―「明るい夜」より

森の中に
目白が鳴いていた
私は
そこらを歩いて帰った
-「昼寝が夢を置いていった」より

宝もののような言葉です。もちろん、宝ものになる一冊です。

2 『あまいへだたり』 藤本 徹著
言葉の美しさをあますことなく楽しめる詩集です。
どこか甘みのある寂寥感は、きっと誰しも感じたことのあるものだと思います。
それを巧みに言葉の力だけで表現されています。
静かな濃い夜に、あるいは穏やかな日曜日の朝に、声に出して朗読したくなります。

想像力をかきたてる表紙や本に使われている心地よい紙の手触りは、「紙の本ってやっぱりいいな」と感じます。

3 『終わりの感覚』 ジュリアン・バーンズ著/新潮社
再読しました。やはり、おもしろい小説です。
自分が正しいと思っている記憶は、いとも簡単にゆらぎます。
その時、これまで歩んできた人生が別のもののように見えてきます。

印象的な言葉はこちら。
「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」

「人の記憶」というものの不思議さを感じる興味深い作品です。


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4 『猫ごよみ365日』 中西 なちお著/誠文堂新光社
一年の暦を猫のイラストと短い文章で紹介する楽しい一冊。
著者の思い出話や想像の世界のお話など、遊び心満載の本です。
とにかく、全ページが猫だらけでかわいらしい…!どこを開いても笑みが出ます。
私はこの本を食器棚に置いていて、毎朝紅茶をむらす間にその日のページを読みます。
朝の小さなお楽しみ習慣です。

雨の日も晴れの日もつづく私たちの毎日は、なんでもない日でも、たぶん特別な一日です。
-「はじめに」より

私も、そう思います。

5 『さざなみの記憶』 安西 カオリ著/新潮社
イラストレーターの安西水丸さんの娘さんであるカオリさんのエッセイ集。
水丸さんのイラストが添えられています。

同じようで同じでない海辺の光景を眺めている間に忘れかけていたいくつかの記憶が浮かんではまた消えていきます。
―「あとがき」より

水丸さんとの思い出、水丸さんの言葉、それからカオリさんの想うこと。
美しい文章とブルーの線が印象的なイラストに心癒される一冊です。

また、水丸さんの絵についての考えに触れることができるのも、この本の魅力です。

デッサンや遠近方はほとんどでたらめだが、でも、誰にもまねできないようなセンスで描かれた作品には、自分なりにこういう風に描きたいんだという気持ちがこもっている
-「父のノートI デッサンを学びはじめて」より

絵は写真のような仕上がりでなくても良いこと。自由に伝えたいことを絵にすること。
その大切さを改めて感じました。

6 『のほほんと暮らす』 西尾 勝彦著/七月社
詩のようなライフスタイルの実用書。
文量は多くないので、あっという間に読めますが、昔の人の言葉が紹介されていたり、気持ちの持ち方や生活方法など発見がたくさんあります。
試してみたいアイデアもたっぷりです。たとえばこんな感じ。

お気に入りの場所でひとり静かに
―「何でもないことを楽しむ」より

仕事は創意と工夫、芸術的に楽しむ
―「のほほん仕事術」より

短く無駄のない言葉。解釈は読者に任せています。
こういう言葉を編めるようになりたいものです。
読み終えるころには、不思議と心が軽くなっています。
何度も読み返したい一冊です。

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いかがでしたか。
あ、ひとつご紹介を忘れていました。
Kindleで『夢をかなえるゾウ』(水野 敬也著)も今さらながら読みました。
仕事の月報で「今月の自己啓発」を書く欄があり、そのネタとして読んだのですが、元気が出てためになる本でした。

気になる本があればぜひ手に取ってみてください。
一月はあまりゆっくり本と向き合う時間がなかったので、二月はもっとタイムマネジメントを意識して、長編小説も読みたいと思っています。

素敵な本の出会いは心おどる体験です。
本の表紙をめくるのは、その世界への扉を開けることです。

初めて読む本ならどきどき、話題書で少しあらすじを知っていたらわくわく、何度も読んでいる本ならただいま。
同じ本でも、少し相性が合わない本でも、なにか発見はあるはずです。

さぁ、今月はどんな本に出会えるでしょうか。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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おまけ
一月の読書のおともたち。

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*LUPICIA flavord  tea “とちおとめ”
春にぴったりな紅茶です。あまい香りでお菓子いらず。
茶葉が細かいタイプなので、ミルクティーにも最適です。

*BASILUR TEA JAPAN “Mini love story vol1“
いただきものですが、パッケージがとにかく素敵。
本のような見た目で、読書のときにぴったりです。すっきりした渋みのお茶です。
お茶が入っていた箱には、切手を入れる予定です。

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