糖尿病の父からショートケーキを買ってくるように言われた時の話

ある日いつものように実家に行くと、ヘルパーさんが来てくれていました。

ヘルパーさんはあわてた様子で私のところに来て、
「ふもねこさん、大変です。
お父さんがコンビニでショートケーキを買ってしまいました。」と言いました。

うちの父は糖尿病で、医者から甘いものを制限されています。
しかし、父は甘いものに目がなく、隙あらばお菓子やスイーツを買って食べようとするのです。

「ショ、ショートケーキですか・・・」と、私は答えました。

ヘルパーさんは言います。
「はい、ショートケーキはさすがにまずいですよね。。
ふもねこさん、後でこっそり持って帰ってもらえますか？
お父さんには私があとでうまく言っておきますから」

「え、僕が持って帰って大丈夫ですかね？」

「はい、息子さんが持って帰ったと言えば大丈夫だと思います。
なんとかうまく言っておきますから」

「わかりました。ではこっそりと持って帰ります」

私はそう言って、冷蔵庫に入っていたショートケーキをこっそりと持ち出し、着ていたダウンジャケットで隠して自分の車に運び入れました。

父は私がショートケーキを持ち出したことには気づきませんでした。
私が用事をすませて帰った後、ヘルパーさんからショートメッセージが来ました。

「お父さんの健康を考えて息子さんがショートケーキを持ち帰ったと説明しておきました。
納得されたご様子だったので大丈夫です。」

私はひとまずよかったと胸をなでおろしました。

・・・

その数日後、私はまた実家に行きました。

書類の整理や部屋の掃除をしていると、突然父が言いました。

「おい、ショートケーキ買ってきてくれ！」

え、やっぱりショートケーキを持ち帰ったこと、根に持ってるのか・・・と私は不安になりました。
しかし、糖尿病の父にショートケーキは危険すぎると考え、
「いやいや、それは買ってこれないよ」と答えました。

父の甘いものを食べたいという気持ちは理解できますが、さすがにショートケーキを食べさせるわけにはいきません。

すると父は言います。
「なんでだ！？ショートケーキがないと困るんだよ！」

私も言い返します。
「何言ってるんだ！父さんは糖尿病なんだから、そんなの買ってこれないよ！」

「糖尿病だからショートケーキがいるんだよ！
インスリン注射に必要なんだよ！」

何を言っているんだこのおっさんはと思いました。

「え、どういうこと！？」

「だから、インスリンの注射を打つときに注射針を消毒するだろ？その時に必要なんだよ！」

え？？？

そこで私は気づきました。

父は「ショートケーキ」ではなく「消毒液（しょうどくえき）」がほしいと言っていたことに。

先日の「ショートケーキ」の印象が強すぎて、「消毒液（しょうどくえき）」を「ショートケーキ」と聞き間違えてしまっていたようです。

私はごめんごめん、間違えたと言って、ドラッグストアに消毒液を買いに行きました。

「ショートケーキ」と「消毒液（しょうどくえき）」、ちょっと似てますよね？？

皆さんも、聞き間違いにはくれぐれもご注意ください。