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アホほど気が散る

突然関西弁ですみません。
夫が大阪ネイティブなので、西の言葉は自分では喋らないものの耳馴染みはいいほうです。
でもタイトルの「アホほど」という表現は夫からではなくて、たぶん関西の芸人さんがテレビでよく言っているのを聞いて、いつの間にか自分辞書に登録されたものだと思います。


いま夫は大阪ネイティブだと言いましたが、実は普段まったくと言っていいほど関西アクセントになりません。隅々までゆるみのない完璧な標準語なのに、関西言葉の方と話すときだけ急にベラッベラの大阪弁になってぎょっとします。


大阪のお義母さんから電話がかかってくると、今の今まで標準語で会話していた夫が急に「そらあかんやん、はあ? なに言うてんねん、アホか、そんなん知らんわ~」とかご機嫌で喋っている。生まれも育ちもバリバリ首都圏でひとつの言語しか使えない私はその豹変ぶりにあっけにとられます。


そして、関西弁って深刻さが薄れるな、といつも思います。
いや、関西弁、恐い人が喋ったらめっちゃドスが効いて恐いんですが、普通のひとの普通の関西弁は、関東言葉で育った私にはシリアスさをぼかした(失礼を承知でいうと、ふざけている)言葉に聞こえるんですよ。


ところで。

私はスマホのメモ機能に『悩みメモ』というのをつけていて、たとえば「どこに置いても靴がカビる」とか「ドライアイがひどくてスマホが見づらい」とか「老後資金が不安」とか箇条書きにしてあります(解決したらひとつひとつ消していく)。

そこに書く悩みを関西弁にすることを、夫の関西弁を聞きながらふいに思い付いたのです。
たとえば最近書いたのは「アホほど気が散る」。


私はとにかくすぐ気が散るんです。
集中力が小さじ1/4くらいしかなく、たとえば洗濯物を畳んでいてふと喉の渇きを覚え、あ、そういえばもう麦茶がほとんどなかったんだ作んなきゃ、と立って行って冷蔵庫を開けてポットを出したところで、あ、夕飯に使う肉を解凍しなきゃと冷凍庫を開けると買い置きしてあったアイスクリームの最後の一個を見つけ、取り出してソファに座って食べだしたり。

でもこのアイスって今日の分の原稿ができたら食べようって思ってたんだよな、先に食べちゃったからとにかく原稿はやらなきゃ!と空のカップをテーブルの上に放置したまま仕事部屋へ急行し、パソコンを立ち上げると編集の方からメールがきていて、私は仕事が遅いのでせめてメールくらいは素早く返そうと常々心がけており、速攻で返信。

そしてネットにつないだついでにインスタグラムやツイッターをチェックし、読者の方からリプライきていて超嬉しい!とノリノリで返信し、ツイッターに上がっているオモシロ漫画を読んでにやにや笑い、その後炎上している案件が目に入ってついクリックしてしまい、あいかわらず世界には酷い話が溢れているなと胸が濁り、そうだ、人の噂話で腹を立てている場合ではなく最近再開したnoteの記事を書かなきゃなとnoteを開いて今に至る。


というようなことを延々と続けているのです。
こんなものはマルチタスクとは言えない。これはただのやりっぱなし。
このとっちらかった感じが若い時から、酸いも甘いもかみ分けたはずの50代後半の現在までずっと続いています。


頭悪すぎる。もうちょっと落ち着いてひとつひとつ物事をクリアしていったらどうなのだ、と先日かなり思い詰めて『悩みメモ』につけようとしました。なんて書こうか、そうだ、「アホほど気が散る」。


そう入力して眺めているうちに、なんか急に可笑しくなってきて「あたい、アホほど気が散ってるやん!」と声に出して言ってみたらさらによく、お気に入りフレーズになりました。


子供のときからずっとずっとアホほど気が散って、勉強しようとしても気が付くとすぐ漫画を開いていて、大人になっても変わらず気が付くと漫画を開いて、生業の小説もひと月に四百字詰め二十枚くらいしか書くことができず、ただくよくよしている時間のほうが長くて、何もかも中途半端にしか出来なかったけれど、なんとなくここまで死なずに生きてきた。


アホほど気が散りマンにしては頑張ったほうちゃう?
そう思ったら放置された洗濯物も麦茶ポットも生ぬるくなった肉もネット徘徊で飛んでしまった仕事の時間も、まあいいかという気になったのでした。いや、よくないんですけど。知らんけど。


というようなことを、もっと素敵な言葉で、新刊『自転しながら公転する』の特設サイト、読者の方へのメーッセージ欄に書いてあります。
是非お読みくださいませ。



自転しながら公転する 特設サイト

https://www.shinchosha.co.jp/jiten-kouten/index.html



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