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FigmaのボトムアップなGo-To-Marketを理解してみた(Lenny's Podcastより)


Podcastについて

Figmaの10人目の社員であり最初のマーケターであるClaire ButlerがLenny's Podcastに出演してFigmaのプロダクトがまだローンチもしない前の創成期から組織がスケールするまでのマーケティング戦略や実行について話していたので聴いてみました。

Claire Butlerのポストはこちら

Lenny's Podcastはこちら

Lenny Rachitsky (author of #1 business newsletter on Substack with 500k+ subscribers) interviews world-class product leaders and growth experts to uncover concrete, actionable, and tactical advice to help you build, launch, and grow your own product.

親切にページの最後にトランスクリプトまで置いてくれているので、読みものとしても良いですよね。翻訳も簡単。

グローバルで活躍するプロダクトのリーダーを招待してグロースやプロダクトのことをインタビューするビジネス系のPodcastです。他にも面白い回がたくさんあるようなのでまたの機会に投稿しようと思います。

Claireの入社当初のエピソードや苦心

10番目の社員で最初のマーケターであるClaireが面白エピソードとして、入社1日目と2日目にやったことを話していました。

当時、元々は"Summit"という製品名で世に出そうとしていて(衝撃)、それを皮切りに色々なブランドをリリースする予定だったので、あえて会社と同じ"Figma"にしなかったみたいです。

入社1日目にそれを聞いたClaireが「一つのブランドに執着すべきだし、名前がOwnableじゃない(直訳は所有できるか、ですが、愛着が湧くかどうか、といった解釈をしました)、会社名と同じ"Figma"にすべきだ」と反対して、2日目にはチームに向けて提案プレゼンをして採用されたんだとか。
この肝の据わりようとプレゼンスの出し方は参考にしたいですよね。

また、Figmaがまだステルス状態だった初期の頃は、自身が初のGo-To-Market担当者だったこともあり、他に相談できる人もいなく、自分の決断に自信や根拠を持つことに苦心したそうです。

そして、話はClaireがまだマーケットフィットどころか製品もローンチしていない頃のFigmaに興味を持ったきっかけへ。もともと、少し大きなスタートアップからよりアーリーステージへの会社へ転職をしたいと考えていたそうで、「Google DocsやAsanaはオンラインなのに、不思議なことに、なぜデザインだけはオンラインじゃないのか?」という課題がロジカルに腹落ちしたからと。

なにか大事な判断する時に、こういう体験って大事ですよね。
彼女は"logically made sense"というフレーズを使っていましたが、あまりにも筋が良い課題設定はもはや直感的に感じるようなこともある気がします。

ボトムアップなGo-To-Market

そして話は本題に移っていきます。何よりも大事にしていることは、

  • 直感性に基づくこと

  • 人々と繋がること

  • 繋がった人々の声を聞こうとすること

これを再現性をもって実行していくこと、と。
理念もシンプルで話が入ってきやすいですね。

この3つをProduct-ledやCommunity-ledと呼んできたけど、やっていることは現場のIC(Individual Contributor)にとにかく焦点を当てること。
ここでいうICとは、つまりはデザイナーですね。自分たちのツールを1日8時間利用してもらうICに焦点を当てて、改善できること。それは非常に小さなアップデートのように思えるかもしれないが、誰かの1回のクリックを節約するようなことに焦点を当てること。コラボレーションといった同じように大事な観点での焦点もあるが、エディターがスタート地点であると。
(Multiplayer機能が実は最初はリリースに含まれていなかった、という逸話もありました)

結果として、製品に愛着を持ったICがそこに自分の社会的立場や自分自身を重ね合わせて、所属する組織やコミュニティに広げてくれる。そのサイクルを見失わないこと。

多くのSaaSがトップダウンで、経営陣やVPといった決済者に直接アプローチし、製品の購入に同意してもらい、組織に垂直的に展開してもらうことを目的に活動を行うのとは全く異なり、現場の実践者に焦点を当てること。愛着を持ってもらうこと。だからボトムアップだと。

わかりみが深いです。

実際にFigmaは最初の3年間は営業チームを一切持たず、また有料広告に多くの投資することもなく、ほとんどのMQLはサイト訪問からフリーミアムの流れ、全ての収益をセルフサービス(利用者のクレジットカードによる決済)で得ていたそうです。

ただ、利用していくうちにProなど上のプランにアップグレードをしたくなり、企業の利用者の場合は調達部にかけあう必要が出てきて、「セキュリティの観点で利用を懸念視されている、問題の解決を手伝ってくれませんか?」と相談が来ると。(わかります)

このあたり、Microsoftの導入の話が面白かったので後述します。

MicrosoftがFigmaを採用した経緯

このあたりの会話も興味深かったです。

知り合いが登録しているのを知ってDMを送ったのが実はきっかけだったという、また違う面白エピソードも出てきましたが、最初はMicrosoftのXamarinというチームが利用を開始したんだとか。時間の経過とともに、Microsoft社内の他チームでもツールを使用する人が増えてきても、暫くは調達部やセキュリティのチェックを通ることもなく、組織全体でどんどん広がっていったと。つまり、利用者のクレジットカードで支払い続けている形で、その時点でエンタープライズのプランもなく、あるところでMicrosoft側から、「ちょっと待って、これを整理する必要がある。セキュリティが必要だ、アカウント管理が必要だ、調達が関与する必要がある」となり、少し高い価格でもエンタープライズプランを検討した、ということ。

ボトムアップで広がり、超大企業の運用を変えさせてしまったわけですね。

ここでさらに興味深かったのが、Node Graph表現での社内ツールをデータ分析チームが開発していて、利用者間の招待だったりをビジュアライズしている、という話でした。組織の名前を入力すると、関連する登録ユーザが表示され、ユーザ(1世代)が招待したユーザ(2世代)が表示され、クラスターをNode Graphで表現していく。

おそらくこういうのだと思われます。

これらのクラスターは組織の中のチームとみなすことができるし、異なる組織の誰かをファイルに招待し、それが新しいクラスターの中心を開始したとも言えると。組織内部の推進者が誰であり、どう伝播されていくかが、可視化されるわけですね。面白い。

信頼性の獲得について

意識したことは、典型的なマーケティングのように「業務効率化」や「協調の促進」といった理屈っぽい訴求を避けたんだそうです。

これはコアオーディエンスであるデザイナーコミュニティに対してどう関係値を築いていったかの創意工夫が見られますね。

製品の技術的偉業、思想やどのように機能するかを伝えること、GridやVector Networkといった機能開発の過程を伝えることに焦点を当てたと。

そして、この信頼性獲得のためにDesigner Advocateのチームが組成され、Figmaのスケールとともに今ではFigmaの魅力を各地域で提唱されてるんですね。Designer Advocateはマーケターからすれば"magic dust"(魔法の粉)だと。

ターゲットしたいオーディエンスが事業側になった時の訴求の仕方もまた違いそうで興味深いです。

まとめ

コンテンツとしてはまだ半分くらいなのですが、残りの半分はまた追って更新したいと思います。(需要があれば)

自身の興味領域もあり、近いうちに簡単にこのあたりをサマリすると思います。

(54:16) Figma’s acquisition, and why it was one of the hardest days of Claire’s career
(1:00:21) Spreading your product within the organization
(1:02:09) The pricing tiers at Figma
(1:17:53) Accelerating spread at scale

また、僕がここでしてることは単なる要約なので、ご興味ある方はリンク先のPodcastやトランスクリプトを直接アクセスいただくことを推奨します!

色々学ぶことがありすぎたのと、聴いてる途中に首がもげるくらいウンウン頷いてたPodcastでした。


※ この投稿内の発言は個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません





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