母にまつわる不思議なこと
不思議な体験をしたことがある。
ちょうど20年前、母と姉と3人で北海道の札幌小樽函館を旅行したことがある。それが最初で最後の3人での旅行となった。小樽のオルゴール館に入ったとき、母が自分用にオルゴールが欲しいといった。欲しい曲は、「アメージンググレイス」というので目を皿のようにして探したが、なかった。「星に願いを」はあるよ。といったらそれを買って帰ることになった。
その7年後、母は亡くなった。遺品を整理していたら、見覚えのあるその時のオルゴールが出てきた。見つけたとき、あっけにとられて口がしばらく開いたままになった。なぜなら、そこにあったのは、同じ形の「アメージンググレイス」のオルゴールだったからだ。箱には、北海道旅行した時の日付と「小樽オルゴール館にて」という書き込みがあったから間違いない。あのときの。なぜ星に願いをじゃなくてアメージンググレイスに変わっているのだ?ネジを回して音を鳴らしてみた。間違いなくアメージンググレイスの曲が流れた。涙が出てきた。
つい最近、あのオルゴールのことを思い出していた。アメージンググレイスに変わる前はなんていう曲だっけ。数日後、そうそう、思い出した。「星に願いを」だった。そして、しばらくぶりにそのオルゴールの音を聴いてみたくなって、懐かしい母の字が書いてある古ぼけた紙の箱を開けてみた。
そうしたら、それは、「星に願いを」に再び変わっていたのだった。