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旅立つ人の背中

とある友人が、しばらく旅に出ることになった。

出発日はまだ先だけれど、餞別に私が趣味で続けているタロット占いをすることにした。彼女は半年に1回くらいのペースで、私のところへタロット占いをしに来てくれる。

結果はエネルギッシュな友人らしいもので、この旅はどうしたってうまく行くことになるだろうなと思った。きっとどこまでも、どんなことがあろうと前向きに楽しくやっていくだろう。心の中には「楽しんできてね!やっちゃえ!いってらっしゃい!」と送り出したい気持ちと、気仙沼にいつでも帰ってきてなという気持ちがずっと同じくらい自分の中に座っていた。

その後、なんだかこのまま終わりたくなくて近況やこの先のことを語らう流れに。友人は話を聴いてくれるのでついしゃべってしまう。今日はなぜだか、いつもより自分の内側を出したくなっていた。もう一歩、もう一歩と自分を拡張し、話して、聴いて、それに呼応してくれる友人。ふたりの間にあるかかわりの線を越えていく。その時間はかけがえのないものだった。

タロット占いだけでは餞別にしてはもの足りない気がして、川内有緒さんの『パリでメシを食う。』を家から引っ張ってきた。私がとあるワークショップで出会った思い出の本。その名の通り、パリで働き飯を食っている日本人何名かに取材したインタビューエッセイで、私に書くことの面白さを教えてくれただけでなく、人との関わり方や自分のあり方までも学ばせてもらった一冊だ。「これから旅をしていろんな人に出会って話を聞きたい」と話していた友人に、リンクするところがあると思って急遽手元にあった文庫本を渡した。よろこんでくれたようで良かった。

そうそう、「豊かさってなんだろう」という問いについてふたりで話したのがおもしろかった。私は「ありのままの自分でいること、そしてそういられる仲間がいること」と答えた。その友人は「自分自身も他人も受け入れること」と話していた。ぜひ旅の中でも一人一人の豊かさを聞いてまわってほしい。そしていつか私にも教えてほしい。

それから、人とのかかわり方についてよく考えているという話もした。気仙沼で過ごす日々の中で変化した価値観がたくさんあるが、一番大きな変化は人とのかかわり方と自分のあり方だ。そのあたりについてもうちょっと噛み砕いて言葉にしてみたいなと思った。

これから旅立つ人を見ているとグッとくる。
寂しさももちろんあるけれど、それよりもこれから出会う世界がたくさんあるという希望を、勝手に感じとってうれしくなる。また会う時にはどうなってるかな。今は楽しみな気持ちが強い。

細いけれど凛とそこにある月がきれいだった。満足の夜。




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