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カズオ・イシグロ わたしを離さないで

Photo by SUHAIL RA on Unsplash

カズオ・イシグロの小説「わたしを離さないで」を読みました。

カズオ・イシグロがクローンや遺伝子などの技術の言葉を使わないでくれて良かったと思います。

そのことで、16歳から19歳という若者が「社会の仕組みゆえの道具」として命を差し出すように求められる理不尽に読み手が想像を膨らますことができます。

1945年。戦闘機や魚雷の操縦桿の一部のように組み込まれて死ぬほかなかった若者の命も同じことだと言えると思うのです。2021年の今、世界で起きている「自由のための戦い」すらも同じことを強いるかもしれません。

社会のロジックが生み出した「誰かの命のため、君の命を捧げるように求める」という言葉の無慈悲さを、この小説が教えてくれたと思うのです。そして、そんなことが世界のどこにでも起こりえるということも。

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