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駄菓子屋犬タロウ

バス停をおりて、角を右に曲がると自宅に着く。
その角に、駄菓子屋の「カドヤ」があった。

角にあるからカドヤだ。
子どもはいつもカドヤでお買いもの。
初老のおばさんが店番してた。

ボンタン飴ときなこ餅がおいしいから好き。
大玉よ当たれ!と
イチゴ飴の糸を選んでひっぱるのもおもしろい。

買ったイチゴ飴を糸からぶらさげて
わたしはタロウに会いに行く。

タロウはカドヤのセントバーナード犬だ。いつも
カドヤの外のコンクリート敷きに穏やかに座ってる。
幼いわたしと同じ背丈だけど、大人にみえる。

垂れた耳や顔の毛、鼻先に触れたかったけど
そうしたかどうかは覚えていない。
犬とはこういうものかと、その姿を眺めた。

タロウと一緒に座ると
コンクリート敷きはオープンテラスになる。

イスもテーブルもいらない。
青空と光。軽い風。タロウがいる。
それで幸せ。

言葉もなく話したら、いつも
きれいな瞳で笑ってくれた。

万引きのスリルを味わったのもこの頃だ。
悪い友だちとつきあってはいけません、と母親は叱った。
タロウは、かわらず温かかった。

最近、偶然にカドヤのそばを通った。
コンクリート敷きの隅で枯葉が踊っていた。















よんでくださった方、ありがとうございます! スキをくださった方、その勇気に拍手します! できごとがわたしの生活に入ってきてどうなったか、 そういう読みものをつくります! すこしでも「じぶんと同じだな」と 思ってくださる人がいるといいなと思っています。