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ロックダウン(都市封鎖)の街での暮らし:ニューヨークからの体験レポート - 2020年4月3日

東京もロックダウン間近と噂される中、不安な日々を送っていらっしゃる方も多いと思います。私は現在、ニューヨークのブルックリンで暮らしています。ニューヨーク市のロックダウンで一体私の生活にどんな変化が起きたのか、一市民の視点から書いてみます。当方、結構ボーっとしてますし、苦手分野の政治的、経済的な視点はかなり欠如して片手落ちでもあります。国や地域によってロックダウンの内容は異なるでしょうから、全く同じことが日本でも起こるとは限りません。ただし想像力の幅を広げておくことは、多分何かの役には立つと思います。実際、NYのロックダウンで起こったことは、一方では私の想像力をはるかに超えていました。また一方では、思っていたよりも案外大丈夫だったりもしました。正しく怖れる。そのための心の準備になればと思い、筆をとります。徒然、思いついたことを長々と書き連ねますので、どうぞご容赦を。あくまで私自身のNY市においての体験に基づく私見ですので、その旨もご了承の上、それぞれの判断でご参考になさって下さい


衣食住について

人間の基本は衣食住。NYがロックダウンになるらしいとの噂を聞いて、まず心配になったのが日々の食料でした。街が閉鎖されたら物流が止まり、食料品も手に入らなくなるのではないか、との考えが頭を過ぎりました。結果を先に言います。街が閉鎖されても食料品などの物流は止まらず、食料が手に入らないという事態は起きませんでした(NYの場合)。都市閉鎖が起こっても、スーパーや薬局等、日々の生活必需品のお店は開いていますし、物流も止まっていません。とはいえ、当初は不安から食品やトイレットペーパー等を買い占める人も多く(私も買い占めはしなかったけれどいつもより多めにいろんなものを買いました)スーパーの棚が空っぽになったりしていました。今はもうそんなことはありません。とはいえ、消毒薬、除菌シート等は今でもなかなか手に入りません。

と言うわけで、買い占める必要は全くないのですが、いつもよりちょっとだけ多めに買って徐々に蓄えるのは悪くないと思います。3、4日外に出なくても食いつなげるくらいの食料がなんとなく家にあると安心できます。スーパーに行けば買えるのに、なんで蓄えるの、とツッコミたくなるでしょ? それはなぜか。ズバリ、なるべく外出したくない、なるべく人に会いそうな場所に行きたくない、人と遭遇する回数をなるべく減らしたい、からなのです。どんだけ人嫌いの引きこもりマインドなんだよ〜! と思うでしょう。でも、これが今のNYの多くの人々の気持ちなのです。人と接触することは、感染の確率を社会全体として高めてしまうのです。逆に言うと、今は人に会わないのが「愛」です。スーパーに行けば、他のお客さんとすれ違うでしょうし、レジに並べば人と近づき、レジの方とも接近します。この回数を出来るだけ減らしたい。なので買い物の回数を減らして、一回にまとめ買いするわけです。念の為もう一度くどく書いておきます。あくまでも「買い占め」とは違いますので、そこは大人の判断で極力「買い占め」にならぬようお願いします! また、一回の買い物の時間を短くして人との接触を減らし、回数は普段通りという考え方もあるかもしれません。これは人それぞれですが、私自身は買い物の回数を減らした方が安全に感じられるのでそうしています。NYでは現在、スーパー等で一度の入店人数を制限しているところが多いです。入口の外に間隔を空けて列を作らせ、中の人数が一定以上にならないように制限しながら入店させるのです。ええっ? そこまで厳格なのか、と驚かれるでしょう。これが実態です。ウイルスの危険の中、スーパー等の生活必需品のお店で働いている方々は天使のように見えます。彼らは感染の不安の中で仕事をされています。平常時よりも買い物は少し不便になるでしょうが、彼らを感染させないこと、が私たちに協力できることなのです。

ちなみに、NYはネットで注文する宅配スーパーも普及しており、私も利用しています。うちでは週に一回の配達でほとんど一週間分の食料を調達しています。普段ならばアパートの各階のドアまで運んでくれるサービスですが、今は双方の感染リスクを下げるため、アパートの建物の1階の入り口外に荷物が配達され、宅配の方が帰った後に取りに行く方式になっています。日本ではこのような宅配スーパーが普及しているかわかりませんが、もしあるとすると、ロックダウンではものすごくその需要が高まります。定期購入など今から申し込めるなら、やっておくのも手だと思います。

NYの都市閉鎖ではレストラン(飲食店)も基本的に閉鎖されています。ただ、テイクアウトと宅配のみで営業しているお店もたくさんあります。ネットや電話で注文しておいて、取りに行くか、宅配してもらいます。基本的に公共の乗り物は使いたくないので、テイクアウトは徒歩で行けるお店になります。NYは普段から配達にも対応しているレストランが割と多いので、今回の移行はスムーズでした。普段宅配をやっていない店も、なんとか頑張ってテイクアウト・宅配に切り替えて営業していたりします。宅配等に切り替えられなかったお店は店を閉めています。感染流行が長引きそうなこともあり、今回のことで廃業に追い込まれるお店もたくさんあるだろうと予想されています。もし日本で飲食店をやってらっしゃる方があれば、徒歩圏の住人に向けたテイクアウト・宅配サービスへの移行を今から想定しておくと、ダメージコントロールしやすいかもしれません。

基本、街中の人がみんな家に籠っていて、なるべく外に出ないようにしているので、宅配業者は大忙しです。宅配のお兄さんが天使に見えます。アマゾン等も普段よりも荷物の数が増えているため、生活必需品を優先して配達しているようです。それ以外のものは、いつもよりもちょっと手に入れにくくなりました。いつもなら数日中に届くものが、数週間後だったり。でも、こうなってみると別に今必要じゃないものも多いわけで、割と問題なく適応できます。

余談ですが、家にいて人に会わない時間が多くなるので、だんだん服装とかがいい加減になります。私は普段から家にいる時間が多い人間なので実はあまり生活が変わっていません。会社勤めの方などは、お化粧や服装などにかけるエネルギーがかなり減るかもしれません。とはいえ、在宅勤務でもネットで会議などもありますので油断は禁物です。上キッチリ、下パジャマなどが頻出していると思われます。


徒歩圏内で暮らす

NYでは地下鉄・バス等の公共の交通機関は運行を継続しています。ただし、病院に勤務する方や生活必需の仕事に携わっている人の移動のための利用が主であり、必要のない場合は極力利用を避けています。なので、基本的には人々の生活圏は徒歩圏内となっています(自家用車を持っている方は話が別になりますが)。外出規制で、できる限り外に出るなと言われてますが、最低限の生活必需品の買い物と散歩はOKとなってます。この最低限、をどのくらいと考えるかは人それぞれですが、我が家では、基本的に1日に一度だけ、人があまり外にいない時間を見計らって散歩に出るようにしています。(雨が降ったりすると、2日くらい外に出ない日もあります)ヨガとか筋トレとか家の中でできるエクササイズなんかも組み合わせるといいと思います。都市閉鎖されて外出規制されると、基本的には「家の中にいる」状態になりますので、室内に長期に渡り籠った状態で心身ともに楽しく暮らす方法をいろいろ考えておくとよいと思います。修道院か何かに入ったような心持ちでもあります。俗世としばらく縁を切る、もうそんな心地ですらあります。私は感染が怖いので、散歩にすら出たくないなあ〜と思ったりもしますが、NYは今や長期戦の様相ですので、適度な運動をして、外の空気を吸って体調管理をするのもサバイバルのタスクの一つです。外に少しは出ないと精神的に参ってくるという面もあります。ウォーーーーンとか叫びたくなる時もあります。なので、感染のリスクを最小限に留めながらも、散歩等は適度にやった方がよいかと思います。

さて、くどくなりますが、ご参考までに我が家の散歩の風景をちょっと描写してみましょう。

アパートから外に出て、またアパートに帰ってくるまでにはいくつかの感染リスクがあります。この感染の危険を乗り越え、どうやって感染せずに家に戻るかが毎回の試練です。散歩程度でどんな危険ゾーンがあるのかって? ありますよ、いろいろ。
まずは自分のアパートのドア。共用のエレベーター。ビルの玄関の共用のドア。散歩中にすれ違う人。帰ってきた時に開けるビルの玄関のドア。エレベーター。自分のアパートのドア。という順番です。ははは、そんな大袈裟な、冗談でしょう? と思うかも知れませんが、これは事実です。もうリアルサバイバルゲームなのです。この中で危険が避けられるものは極力避けます。まず、エレベーターは使わず、階段で登り降り。アルコールの消毒剤を携帯して、まず建物の玄関ドアを開けて外に出たところで手指消毒します。散歩中は、何も触らないように気をつけます。常に辺りに注意を払い、向こうから人が来たら、6フィート(1.9メートルくらい)の間隔が取れるように、お互いに配慮して歩行コースを調整します。時々、ランニングしてる人なんかが速いスピードでこっち向かってくるので、その場合は必死に道路の向こうにひゃーっと逃げます(笑 。今は6フィートのSocial Distancing=他の人と2メートルの距離を保つ対策が周知されているので、街中でこのような挙動不審者みたいな動きをしても、感謝されこそすれ、失礼な人だと思われたりはしません。交差点などで人が溜まりがちなので、歩行速度を調整してなるべく近づかないようにじわじわみんなで協力します。なんだか、街中でみんなが一緒に新しいルールのゲームをやってるみたいな感覚です。
帰り道は、まずアパートの建物の前でアルコール消毒(これはもしかしたら自分の手にウイルスがついてるかも知れないというアパートの他の住人への配慮の気持ちで)、そして建物内に入り、エレベーターは使わずにアパートの部屋まで登り、アパートの中に入ったら速攻で手を念入りに洗います。これで本日の散歩終了。結構、神経使いますね。ふぅーっ。でも慣れれば平気になってきます。

アルコール消毒剤がない場合は、とにかく何かを触ったら自分の手にウイルスがついてるかもしれないと考えて、絶対に顔を触らず、家に帰ったら速攻で手洗いすることで同様の効果が得られると思います。共用のドアノブなど、外にあるものに触った時にはウイルスがついている、という前提で行動するのが吉、です。

外出時、マスクはこれまでしていませんでした。新しく購入することは今は難しく、アメリカではこれまでマスクではウイルス感染を防げないので、症状がある人以外はマスクをする意味がない、と言われていました。そもそも日本と違い、アメリカは普段はほぼ誰もマスクをしていない国なので、マスクの流通量も少ないのだと思います。にも関わらず! 今は道行く人のかなりの割合がマスクをしています。一体どこから手に入れたのだろうか、とそれも不思議なのですが。また、最近(4/3現在)、症状のない人がマスクをすることにもある程度の予防効果があるのではないかという論調に傾きつつあるようです。決定的なことは専門家もまだ言っていないようです(下の追記をご参照ください)。3/31のNY Timesにマスクの作り方が載ったりしています。マスクをしていれば絶対安全ということはないようですし、ウイルスが付着したマスクを触ってしまったり、使い続けることで起きる危険などもありそうです。マスクを過信しすぎず、自分が感染しているかも知れないという仮定では人にうつさないために少しは役に立ちそうなので、とりあえず自作しておこうかなと思っています。マスクの効果については一番今知りたいことですが、専門家の決定的な見解がなかなか出てこないのが歯がゆいところ。医療現場でのマスク不足はこちらでも問題になっています。一番マスクが必要なのは医療現場であることは間違いありません。まずそちらを優先して、その次に自分をどうするか。この順番は間違えないようにしたいと思います。

4/4追記:昨日、CDCアメリカ疾病予防管理センターが布マスクの着用の推奨へとガイドラインを変更しました。その理由は、感染していても症状がなかったり、まだ症状が出ていない人からも感染が広がるという新コロナウイルスの特性が明らかになり、こうした人がマスクをすることで、感染拡大を遅らせる効果が期待できる、ということのようです。推奨しているのは布マスクで、医療用マスクやN-95マスクではありません。また、マスクに加え、引き続き人と6フィート=1.9メートルの距離を取る対策を推奨しています)


インターネットについて


NYは都市封鎖になって、病院や薬局等と生活必需以外の全てのオフィスや店舗が閉鎖になり、基本的に在宅勤務に切り替えられました。学校も閉鎖中です。つまり、できうる限りの全てがテレワークとなり、学校もインターネット・ラーニングに切り替えられました。この過程で、テレワークに切り替えられない業種で仕事を失った人がたくさん出ました。逆に言うと、ネット上でも業務を続けられるインフラのあるビジネスは、スムーズに対応して、影響を最小限にすることができました。実店舗のみのビジネスは今とても厳しいと思います。これからどのような局面が来るのか分かりませんが、今回の危機に際して、業種を問わずネット上でもビジネスを続けられるようにインフラ整備をしておくのは悪くないと思います。都市封鎖になっても、物流・運輸は止まりませんし、ネットでものを買う人はむしろ増えると思われます。レストランなどは人が来なくなるのでとても厳しくなります。徒歩圏の住民を想定したテイクアウトや宅配等のサービスに移行できるように準備しておくと、いざという時に役立ちそうです。同時に、ネット上でも注文できるとか、少なくともメニューが見れるとか、そういうのがあると利用も増えると思います。

私はアーティストという変わった職業なので、私の身の回りのことはあまり参考にならないかも知れませんが、ちょっとそちらも書いてみます。
ミュージシャンの友人は普段ピアノも教えていますが、今はインターネット・レッスンに切り替えたようです。劇場も全て閉鎖中なので、お客さんを集めて何かすることは当分できません。それぞれの劇場が今、インターネットのライブ中継を使ってパフォーマンスを配信したり、アーティストがそれぞれ外出制限中の自分の家から作品を配信したり、あの手この手でアートの火を消さないようにがんばっています。私のところにも、インターネットのライブ・ストリーミングを使った子供のためのパフォーマンスやワークショップをやって欲しいという依頼が来ています。基本的には無料で見れますが、その代わりに視聴者は劇場や団体への寄付で活動をサポートする形になっています(もちろん強制ではなく、寄付するかしないかは自由)。

無料のエンターテイメントがいくらでもある世の中ですが、好きなアーティストやお気に入りの劇場などには寄付でも投げ銭でも何でも良いので、今はお金をいつもよりも積極的に払う気持ちでサポートすると良いかと思います。何だか私にもお金を下さい、と言ってるみたいですが(笑)、そうではありません。もちろん芸術だけではなくて、好きなお店、好きな飲み屋、何でもいいです。金銭の余裕のある方は、ぜひここぞとばかり自分が守りたい何かに投資してみてください。ウイルスの嵐が通り過ぎた後に、殺伐とした荒地だけが残らないように。今は凌ぐくらいしかできないけれど、またいつか芽生えることができるだけの力が保たれるように。

心構え


東京など日本の大都市のロックダウンは、経済的打撃が大きすぎるからやらない方がいいと言う人もいます。私は政治や経済の専門家ではないので、詳しいことは専門家にお任せします。ただ、一つ言えるのは、NYのような巨大都市ですらロックダウンしざるをえなかった、という事実です。NYは有名なウォール街を挙げるまでもなく、世界の経済活動の中心地であり、普段はビジネス! お金お金! 商売商売! の生き馬の目を抜く如き街であります。星の数ほどもあるレストランやバーに連日お客が押し寄せ大繁盛、目抜き通りは観光客でごった返す、そんな絵に描いたような大都会です。その巨大な商業都市が封鎖された時に起こる経済的被害は、計り知れないものがあります。そんなことは政治家も重々承知していました。失業者の数は膨大ですし、今後どれだけ損失が大きくなるのかも想像するだけで体が震えるほどです。それでもなお、都市封鎖するよりも他にウイルスの蔓延への対処法がなかったこと(少なくとも今の段階では)、多くの人命を救うには他の方法がなかったこと、をもう一度大文字で書いておきたいと思います。

日々の感染者数が一気に増え、医療崩壊の危機はアッという間にやってきました。都市封鎖をすれば1〜2週間くらいで徐々に状況が改善するのだろうという予想(これが私の最初の頃の考え)もまだまだ甘っちょろいものでした。NYの外出禁止令が出たのが3月20日ですので、今日(4/3)で二週間になります。この間、状況は悪化を辿り、感染者・死者の数は爆発的に増えました。4月3日現在、NY州のクオモ知事はあと数日でNY州は人工呼吸器の数やベッド数を感染の勢いが上回る医療崩壊に至ると報告しています。14日前に始まった都市封鎖の効果が出てくるのはこれからだと考えられていますが、感染のピークまでにはまだ2、3週間あるとも言われていて、ともかく予断を許さない状況です。

この状況を戦争に例える人もいます。確かに、医療現場は野戦病院のようになっているようです。空襲を警戒して家に潜むように私たちもまた家から外に出ずにいます。

厳戒態勢、といえば、確かにそんな状況です。でも、一方で毎日の生活は淡々と過ぎていきます。仕事して、食べて、運動して、ネットの映画なんかを観て楽しんで、寝る。感染していない人、感染していても発症してない人、発症しても軽症の人の生活は、たぶんどこでもそんな感じです。

外出制限するためには、そのことによって収入が失われる人の補償がされなければなりません。制限と補償はセットでないと機能しないので、不完全であっても早急にそうした措置が必要です。ここは行政が主導するしかないわけです。中途半端な、できれば外出しないでね、でも補償はしないよ、みたいな政策では正直、何の効き目もないと感じます。NYは徹底した都市封鎖に踏み切り、街は今や出歩く人もなくほぼ空っぽになったわけですが、それでも感染者の増加になかなか歯止めが効かないのですから。

何だか悲壮になってきましたが、新型コロナウイルスのいる世界は、以前の世界とは違う「新しい世界」だということを最後に書いて筆を置きたいと思います。都市封鎖をやって現在の感染爆発に何とか歯止めがかかったとしても、ウイルスが完全に消えてしまうわけではなく、たぶん私もあなたもいつかは新型コロナウイルスに感染するでしょう。ただ、現在感染していない(らしい)人ができることは、医療崩壊が起こっている今のこの時には感染しないようにする(出来るだけ感染を先延ばしにして、感染が落ち着き、医療現場が正常化するのを待つ)ことなのかなと思います。ワクチンが開発されればかなり緊張は緩和しますが、それまではなるべく感染しない(うつらない、うつさない)ようにすることが一人一人の目標。それが全体としては人を助けることになり、自分も助けることになるという仕組みです。自分だけが助かれば人はどうでもよい、という利己的な構図があまり意味を持たないのがこの「新しい世界」の景色です。なんとなくみんなで行動様式を変化させて、全体で対処していかないと解決できそうにないのです。家族内、ご近所レベル、街、市、国、いろんな枠組みのサイズを変えてみても、どのレベルでも私もあなたも彼も彼女も、貧富の差も有名無名も関係なく、みんなで新しいルールを守ってやっていくしかなさそうなのです。少なくともしばらくは。

ただ、欲しがりません勝つまでは、みたいな精神論とは違いますし、挙国一致といった全体主義的戦争マインドとも異なると思っています。うまく言えませんが、全員が勝てないと全員が負けるという全く新しい感覚のゲーム(この非常時にゲームだなんて不謹慎であればすみません)を人類全体、地球全体でやってるみたいな感じです。難しいですよ、このゲーム。自分だけ良かれと買い占めたりしても、それが自分にマイナスになって帰ってきますから。相手のためにしたことが自分を有利にしたり。全体を大きな目で見る視点、そういう感性や想像力が今求められているのかもしれません。そんな中、さ〜て今の自分にできることは何かなあと思うと、求められている想像力の壮大さとは打って変わって、家からなるべく外に出ないことと、さっき「散歩」の項目で書いたような、ちょっと常軌を逸したくらいの手指消毒や手洗い、といった程度のとても身近な行為の話になります。

私は楽器奏者でもありますので、手は綺麗にしておきたいなあといつも水仕事は手袋をしてやっていました。今では1日に何度も何度も石鹸で手洗いしますので、手はガッサガサ、自慢の白魚のような手(ウソです)が台無しです。それでも、「新しい世界」に今現在できることで参加する、そんな気持ちで毎日を淡々と送っております。いや、淡々と、はウソかな。イライラしたり、ちょっと正気を失いそうになることもあります。そんな時は花を見たり、窓から鳥を眺めたり。本を開いて先人の言葉を紐解いたり。今ならネットで地球の反対側にいる人に愚痴もこぼせます。自然はいつでもそこにありますし、その営みは人類全体という視点さえまだまだ小さいことを教えてくれます。

みなさま、どうぞお気をつけて。お元気でお過ごし下さい。

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