道具としてのアプリケーション - 使いたいときに、使いたいだけ使う
すごくぼんやりした話です 💬
きっかけ:コンヴィヴィアル・テクノロジーを読んだ
少し前に読んだのですが、
テクノロジーが「ちょうどいい道具」として、人間との適切な関係とはどういうものかから始まり、人間と様々なもの(情報・モノ、自然、デザイン、人間)との関係性が考察されています。
人間が他のものと関係を持ちながら生きていく「共生」とはどのようなものか・どうあるべきかについていろいろな視点を教えてもらえる本でした。
自分は普段アプリケーション開発に関わっており、せっかくなので「ユーザーとアプリケーションの関係はどうあるべきか」をちょっと考えてみようかと。
※今回「アプリケーション」という言葉はWebサービスやそれを提供するWebサイト、モバイルアプリなんかを主にイメージして使っています。
言葉として不正確かもしれませんが 🙏
アプリケーションが「ちょうどいい道具」であるには
前述の分水嶺の1つ目と2つめの間、人間とアプリケーションの丁度いい関係を保つために。
人間が健やかに過ごすための、アプリケーションとの関係はどうあるべきかという話ですね。
現在では、アプリケーションがとにかく繋がりを常に保っていたがるため、ユーザーの生活にあまりにも割り込みすぎている気がしています。
あくまでユーザー側にニーズが発生したときに取り出して、達成したらしまっておく。
そんな道具としての自然さがあるべき姿なのではないでしょうか。
必要なときに取り出せる
とはいえ前提として、
ユーザーはニーズを満たしてくれるはずのアプリケーションの存在を知らない
ユーザーは自分のニーズをしっかり把握しているわけではない
ことがほとんどなので、釘を打ちたいからハンマーを道具箱から取り出す、ホームセンターに買いに行く、みたいにスムーズにいかないのがそもそも難しいですよね。
デジタルプロダクトですぐ取り出せる状態を作るためにできることは、「検索で見つけやすくする」「利用シーンがイメージしやすいような訴求を行う」「広告で認知してもらう」などでしょうか。
ただやりすぎて押し付けがましくなったり、ユーザーの行動を制限する、自由を奪う場合もあるのでバランスが大事になりそう。
ユーザーの頭の片隅に置いておいてもらって、ふとニーズと結びつく瞬間が訪れるような結びつきが理想的な「ちょうどいい」な気がしています。
…どうやったらそんな状態を作れるんでしょうね?
(めっちゃむずい)
使い終わったらしまっておける
とても大事なことだと思うんですが、一般的なアプリケーション開発ではあまり考えられていないような気がしていて。
もう目的は達成したのに「こちらの商品はいかがですが」「今ならこれがお得ですよ」「ログインするだけでポイントが」といったプッシュ通知やメールが次々と。
釘打ち終わったのにハンマー握らされてる状態ですよね。
ずっと一緒にいるのではなく、お互いが自然にシーユーアゲインと言えるのが「ちょうどいい」関係ではないでしょうか。
考えるべきは止めさせないことではなく、次また会えるようないい別れ方とはどんなものか?なのではと。
また使い始められる
なので、利用を止めやすくするのが大事なのと同時に、また使い始めることの手軽さも重要になりそうです。
再度利用を始めたときに「どうやってログインしてたか思い出せる」「前回何をやっていたか思い出せる」「前回利用時との違いがわかる」などなど。
もしかしたら機能だけではなく、また迎え入れてくれる温かみ、みたいなものも大事なのかもしれません。
道具とユーザーが、お互い影響し合う関係に
当たり前ですがアプリケーションの説明として「XXができます」「XXなときに役に立ちます」みたいに具体的なイメージを共有するのは大事です。
そういったフックがあることでユーザーとの関係をもつことができるので。
ただ道具としての魅力って、アプリケーションが提案した事ができるだけでなく、ユーザーが新たに使い方(価値)を発見できるところにもあると思っています。
↑CONTEXT DESIGNでは余白などと表現されている「決まっていない部分」を残し、ユーザーに委ねるというのもちょうどいい道具/関係の1要素かなと思っています。
もちろんハンマーは「鉄の部分で釘を打つ道具です!」といって渡すのですが、それを何にどう使うかは完全にユーザーに委ねられているんですよね。
重しとしてつかってもいいし、柄の部分でなんか作業してもいい。
そういった道具から恩恵を受け、またその道具にふれることによってユーザーから生まれた新たな使い方が道具をさらに便利なものにする、というポジティブな関係性が「ちょうどいい道具」では作れるはず。
アプリケーションではまず利用できることに気づいてもらうため、そして早く目的を達成してもらうために具体的なイメージややり方を提示することが多いかと思います。
ハンマーとは違って目的(&過程)が複雑な場合が多いので、なるべくかんたんにわかりやすく使ってもらえるような工夫ですよね。
ただそれだと余白がなさすぎて、お互いを高め合うような理想的な関係にはなりにくい。
どうやったらそこから余白や別の文脈を見つけてもらえるか。
ありがたいことに、アプリケーションはユーザーの状態によって提供するものを変えることができます。
例えば、UIデザインとして「ユーザーステータスごとに文脈(見せ方)を変える」という工夫ができそうです。
初心者には具体的な利用場面、方法がわかるような説明をおこなう
具体的なオンボーディング
モードに入ってもらって、一本道を進むような利用の仕方
アプリケーションが提案したことが実現できた!という喜び
上級者にはできることや特徴を提案する
モードレスな状態で、自由に利用してもらう(余白をさらす)
アプリケーションを利用した自分なりの使い方を発見できた!という喜び
このアプリケーションの柔軟性を利用することで、ユーザーとの関係をときには近く強く、ときには弱く遠く、という調整が可能なのではと思ったりしました。
追記(2023/3/8)
関連してすごくいいなと思った記事がありまして。
ああーなんかこちらからの提案を考えて広げなきゃ!って思ってたんですけど、むしろ明確にポイントを伝える(制限する)ことでサービスが広がっていくっていうのはたしかにそうかも…
めっちゃ納得してしまいました。
余白を残すことと、使い方を提案することは両立するしすべきだなと。
ビジネスKPIとどう向き合えばいいの?
とまぁいろいろふわふわしたことを書いたのですが、結局それはビジネスKPIとは別のベクトルになりがちです。
アクセス数やアクティブユーザー数と売上の相関があるのは明白で、ユーザーを捉えて放さないのが大事になってきますから。
「ちょうどいい道具・関係」の価値を表現すること、(今の社会の仕組み上における)価値とすり合わせることをやっていく必要があると思うのですが、なかなか大変そうだなぁと。
終わりに
改めて感じたのは、やっぱりアプリケーションデザインというのはこの「関係性」をデザインすることなんだなということです。
人とアプリケーションの関係、アプリケーションを通した人どうしの関係、人とその人がいる世界との関係などなど。
自身はなにか特別なデザインや開発スキルを持っているわけではないですが、この「関係性」というものに着目しつづけてキャリアを続けていきたいと思います。
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