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【雑記】晴れた秋の日に思うこと

素晴らしい映画を観て気分が良いと、ついその足で喫茶店に入り作品のパンフレットを読んだり、ただただ映画の余韻に浸りたくなったりする。
今日もまさにそうだった。

「DUNE 砂の惑星」の2回目の鑑賞を終えた私は、映画館の一階に入っているスターバックスでミントのハーブティと新作のピスタチオのケーキを食べながら、映画の感動を噛み締めていた。

今日は本当によく晴れていて気持ちの良い日だ。
それに、明らかにほんの数週間前よりも街に活気が戻ってきている。その様子を眺めているだけでとても幸せな気分だ。今日の映画館も月曜の朝にもかかわらず、最近の中で一番混んでいたような気がする。

スターバックスの店内ではサラリーマンたちがコーヒーを読みながらノートパソコンを突き合わせて和やかな打ち合わせをしていたり、まだ付き合いたてと思われる若いカップルが隣同士でピタリとくっついて談笑をしたりしている。私のように1人で物思いにふけている人も数名いたが皆各々に良い時間を過ごしているように映る。

ちょうど私の隣に、おそらく私と同年代、三十代半ばぐらいの太い黒縁メガネをかけた男性が甘そうなフラペチーノを片手に席に座った。デニムから赤い靴下がチラ見えしているのが印象的だ。
私はつい彼がバッグから取り出した本の表紙の「成功の法則」「3つのやるべき〇〇」という文字に目がいってしまった。

なんだか久しぶりだ。
自己啓発系やビジネス系の本を、私も献身的に読んでいた時期があった。読んでいたというよりは読み漁っていたと言ったほうが良いぐらいだ。

あの頃の私は、何か人生の答えだとか決定的な成功法則のようなものがどこかに書いてあるのではないかと期待していたのだろう。

結局それらが私にもたらしたのは、かつて好きだった小説を読む時間を奪っただけでなく、映画や音楽などを心から楽しみ味わう感受性も失わせてしまっただけだった。私の場合は、だが。

またそういう本が必要になる時が私にも来るのだろうか。いや、来ないだろう。

2年前に起業し、本当に色々あった。思い出したくない嫌なこともたくさんあった。もう一度会社員をやったけれど、色々あってそれも辞めた。昔のよしみで仕事の声をかけてくれた人もいたが、全て断った。

知らないうちに会社を辞めて10ヶ月にもなっている。起業した当時の一生忘れられないだろうと思っていた嫌な感情も、2年も経てば半分ぐらいにはなった。
今年会社を辞めた時の投げやりと虚無感はもう嘘みたいに忘れている。
5月から暇つぶしと小遣い稼ぎにはじめたバイトにはもうすっかり慣れた。

全部、きっとそういうものなのだ。

ぼんやりと考えながらスマホを開き、ストリーミング動画サービスのアプリを横断して観たい作品を整理する。
Netflix、U-NEXT、Amazon primeにディズニープラス。溜まっていく一方の映画リストを観てニヤニヤする。

私はこういうのでいい、これが幸せなのだ。そう思うと同時に隣のサラリーマン風の男性の本を読む姿が妙に気になる。
大好きだった映画も読書もできなくなっていたあんな頃に戻りたいわけではない。だからと言ってそれでいいのかと問われたら考え込んでしまう。

今はただ目の前を歩いていくしかないのかもしれない。
本を読んでも、映画を観ても時間をかけて考えてもひとつも答えは出ないのだ。

外に出て空を見上げるとすぐ近くで航空自衛隊の飛行機が通過した。

そろそろ飛行機にも乗りたくなってきた。
またあの時に訪れたあの国の景色を見れる日も近くに来ているような気がする。

今度はどんなふうに感じるだろうか。
全く違って見えるのだろうか、それとも変わらず同じように映るのだろうか。

2021.11.1の日記

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