映画「ダージリン急行」は、まるで旅した気分になってじんわり心が癒される作品
「おしゃれなヒューマンコメディ映画」といえば、必ず名前が上がるのがウェス・アンダーソン監督。
彼の作品はなんといっても世界観というか、「トーン&マナー」が大好きだ。映像やファッション・美術・カメラワーク、フォント・色彩などデザイン的な要素だけでなくストーリーからキャスト、もちろん音楽まで一貫していて、かつ完璧なのだ。
もう、すべての映画のシーンを額に納めたいと本気で思っている。だから普段DVDなどは収集しない私が彼の作品だけは全部持っている。(ちなみに私は、アニメーション作品よりも実写のほうが各段に好き)
おしゃれな映画、というと、「美術だけに力を入れているアート映画なのでは」と思いがちだが、ウェス作品は全くそうではない。むしろメインテーマはいつもじんわり心があたたかくなるような、人間ドラマ。
最後はなぜかじーんと優しい気持ちになる。そのギャップと彼の作り出す独特で色彩豊かな完璧ともいえる世界観が、ウェス・アンダーソン映画ファン(私)にはたまらない。
映画「ダージリン急行」はブルーとイエローを基調とした色味とインドのエキゾチックでスピリチュアルな旅の雰囲気が最高に素敵で、なぜかとてもあたたかく、癒される気分になるロードムービーだ。ウェス映画の中では私が最も、好きな作品でもある。
長男フランシス、次男ピーター、三男ジャックの、ホイットマン3兄弟が、「3人で心の旅をする」という長男フランシスの声掛けで、3人でインドの列車の旅に出る。父がなくなって以来、ばらばらに離れていた彼らが、旅での出来事を通して、しだいに互いに心を通わせ、人生を見直していく話だ。
コメディタッチなストーリーと、は裏腹に、生や死、家族との再会の物語がメインテーマだ。主演の3人を演じる、オーウェン・ウィルソン(フランシス)、エイドリアン・ブロディ(ピーター)、ジェイソン・シュワルツマン(ピーター)の不器用かつかわいらしいキャラクターは愛せずにはいられない。
個性的で全然違うタイプの3人は生き方も趣味も全然違うから、インドの旅中もそれぞれがそれぞれの価値観を貫いている。であるわりに、家族への帰属意識が高いのか何なのか、3人とも「自分のイニシャルが入ったお揃いのスーツケース」を持つあたりも、またほほえましい。(このスーツケース、ルイ・ヴィトンが製作したそうで、スーパーかわいい!)
映画ダージリン急行の魅力は、冒頭でも書いたが、「ここではないどこかに旅している」気分になれるから、今ますます好きになってしまう作品だ。ソファの上がインドの魅惑的な街になったみたいに感じるかもしれない。
ブルーが素敵な列車のインテリア、車内でサーブされるおいしそうなインド紅茶、にぎやかで色とりどりな市街地。ラクダと歩く乾いた砂漠の空気・・この異国の雰囲気に、いつも、なぜかどうしようもなく惹かれてしまう。
ちょっと疲れた時、何も考えずにぼーっとした時間を過ごしたいときにはこの映画が優しく癒してくれる。
ああ、それにしても、旅に出たいなあ。
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