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乙女心は、永遠に

「名建築で昼食を」という日本のテレビシリーズをアマゾン・プライム・ビデオで鑑賞したのだが、これがとてもよかった。

前々から存在は知っていたのだが、普段、海外のドラマや映画ばかりに夢中な自分はずっとスルーしていたのだ。だが、つい先日夫が「これ君、きっと好きだよ」と言うので試しにみはじめたら、あっという間だ。建築の美しさや背景に惚れこみ、最後は心があたたかくなる。


ストーリーは、カフェ開業を夢見ている池田エライザ演じる藤(ふじ)が、インスタで「ちあき」という人物が撮る「乙女建築」とタグ付けされたノスタルジックで可愛らしい写真に憧れて、弟子入りしたいとDMを送るところから始まる。

ある日、藤は「名建築でランチをしませんか」という、ちあきからのDMの誘いに行くと、田口トモロヲ演じる千明が現れる。

「てっきり、女性かと思っていた」、とこぼす藤に対し、

乙女心って男でもなんでも、誰が持っていてもいいと思うんだ

という千明(田口トモロヲ)のセリフがとてもいい。


千明のちょっと変わった価値観や物の捉え方が毎話面白く、仕事や友人関係に少しだけ疲弊している藤の心が次第に溶けて行く様にも共感する。

世代の違う男と女が、一つの同じ興味を通して、決して異性愛ではない、人間同士のゆるやかで誠実な信頼関係がとても心地良くて好きだ。

1話ごとに紹介される建築のセレクトのセンスの良さも素晴らしくて、建築の背景にあるストーリーに思いを馳せてしまう。

自分が個人的に偏愛していてちょうど先日宿泊したばかりの「山の上ホテル」が紹介されていたのも、嬉しい。

東京都庭園美術館や、自由学園明日館など自分にも馴染み深い建築が多く改めて訪れてみたい。



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昔から、ちょっと古くて乙女なものにどうしても惹かれるものがある。


乙女といってもファンシーとも、ただ可愛いというのとも少し違う。それはこの作品の中でちょっとした誰も目に止めないような建築のディテールにロマンを感じてしまう千明の感覚にとても近いのかもしれない。

ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」、大島弓子「バナナブレッドのプディング」、モンゴメリ「赤毛のアン」。学芸大学前のお菓子屋「マッターホーン」の包み紙、ソフィア・コッポラやグレタ・ガーウィグの映画、ジョン・ヒューズのラブコメ、ギルモアガールズ、レナ・ダナムのドラマ、ガールズ、ミンディカリングのティーンドラマ、トルーマン・カポーティ、ヴィクトリア&アルバートミュージアム・・etc。


結局、私は永遠に大人にならずに少女心というものにたった1人で浸っていたいのかもしれない(笑)自分自身は決してというか、全く乙女なタイプではないのに。だからこそ憧れを含むものなのかもしれないけれど。

余談であるが、最近(上にも書いた)「ミンディ・カリング」というアメリカのドラマプロデューサー(&俳優、脚本家)がとても好きで、個人的に今とても気になる存在だ。

Netflix「私の”初めて”日記」というドラマや、HBO MAXの「セックスライフ・オブ・カレッジガール」(U-NEXTで配信中)という作品が話題だが、どちらも私の乙女心をくすぐってくれてとても好きだ。
つい先日はTIME誌で2021年の会社100というような記事に彼女自身が大きく掲載されてもいた。

それから、フィービー・ウォラー=ブリッジというイギリスのプロデューサー(&俳優、脚本家)もいい。Amazonオリジナルドラマ「Fleabag」や「キリング・イヴ」(U-NEXTで配信中)といったテレビシリーズで話題だが、こちらもまた(決して作風がそいういうわけではないしむしろ過激描写もあるのだが)なぜだか乙女心を刺激される。

こうしてかいてみると、乙女心とは、周囲と自分との境界が曖昧で、なんとなく世間に馴染めないというような儚さとちょっとしたグロテスクさのようなもの、という感じではないだろうか。

誰の心にもほんの少しだけある、毒気と、ロマンチシズムと未熟さ。

私はそういうものが好きなのだ。

たしかにそれには、男とか女とか年齢とか、そんなものは全く関係なさそうである。

やはりこれからも自信を持って「乙女」な、なにかをずっと偏愛していくつもりだ。

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