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人間の深み のこと


底の浅い人間と思われたくなかったのかもしれない

人としてのコミュニケーション能力が欠如していた子供の私は
友達を作れず 友達と楽しく遊ぶ術を知らず
ひたすら本を読み耽った
面白いことや気の利いたことを言えないので
ひたすら本を読んで現実から逃げて
その面白い世界に埋没していった
世界の名作と呼ばれるもの
世界の偉人たちの伝記
純文学 SF  ホラー ライトノベル 随筆 古典落語に至るまで
ありとあらゆるジャンルの活字を読み漁った

あの頃
私は人より広い世界を知った気になっていた
広く深く 宇宙の真理にまで思いを馳せ
こんなに考えている 深みのある人間はなかなかいないだろうと思っていたのではないか

なんで今になってそんなことが気になるのかって
私は 全てを捨てようとしているからだ
考え癖も執着心も洋服も食器も

あの頃は
全てを所有したかった気がするなぁと思い出していた
所有が 人間の深みを生み出すとでも思っていたのだろうか
たぶん当時は深みのことなんてなんにも考えてはなかったけれど
ぎっしり持ってることが安心だったのかなあと思う
他とは違うというステータス
自分なりの価値観だったんだろう

今、所有をやめ自分の生活にも心にも余裕が生まれてくると
かつて所有していたことで広がった器の大きさが
人間の深みを生むのではないかとふと思った
その空間に何かがギッシリと【ある】必要はなくて
むしろ何にもないことで生まれる凄み
何にもないから感じる優しさと怖さ

年を取るのも悪くないなと思う
執着し所有することで広がった器を持っている
ここから先はその中身を空っぽにしていくフェーズだ

そういえば昔 教会で歌うのが好きだった
とても広い空間で 声がよく響いた
あの心地よさ あのごまかしがきかない感じ
あれこそが深みの正体なんだ

エネルギーを増幅して返してやる
そんな空間を内包した人間になることにする

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