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なにもの

"君たちは一体何者になるんだろう、
と今から心躍らせています。"

当時中学卒業間近だった頃先生に貰った言葉だ。

別に3年間担任だった訳でも、部活の顧問だった訳でもなく、ただ、たった半年ほど生徒会の顧問として見守って下さっていた先生だ。
正直口数も少なく、何考えてるかよくわからんなーと思っていた。

そんな先生が、目を丸くして本当に不思議そうにくれたこの言葉が、忘れられない。

忘れられないのだ。

自慢げに言うことではないが、記憶力の無さで誰かに負ける気はない。
高校時代なんかスポーツ祭のクラTの背ネームに"忘却魔"なんて印字して、周りは口を揃えてその通りだと言った程だ。

それでも、覚えている。

部活ランニング中、転けて水たまりにダイブした瞬間、一瞬プール開きと錯覚したあの瞬間よりも、
卒業式で答辞を読んでいる最中、涙が止まらんで台詞が続かない!と見せかけて必死に、鼻水!鼻の穴に戻れ!とずびずびしていたあの瞬間よりも、

鮮明に覚えている。

ただ毎日をこなす事に必死で、遠い未来の存在なんか信じられなかったあの頃。
誰からも頼まれていない目の前の期待に応えるので精一杯だったあの頃。
あの言葉ひとつが、初めて私の未来と可能性とやらの存在を私に教えてくれた。

私自身を素敵だとどう頑張っても思えず、私を大切にできない私。
そんな私を1人の人として認めてくれたような
そんな深い言葉だった。

じんわりと浮かんできた涙が瞼から落ちてしまいそうなのを隠しながら、"どうせ皆に同じ事言ってんでしょ子ども騙しだ全く"って、大人ぶった顔をしてやり過ごした。



あの言葉を、特に何でもないほんとにふとした瞬間思い出す。

そして、"私には無理だ"なんていう体内に大量にはべりついて剥がれない観念に、あの言葉がカバーをかけて見えないようにしてくれる。

私もそんな言葉の魔法をかける人間になりたい。

そうやってまだ何者にもなれない私は今日もゆるくもがいている。何者かになった人たちのドラマをみながら、もがいている。

あ、東京ドームライブは行く!
(わかる人にはわかる)

P.S.

高校時代のクラTの背ネームが"忘却魔"だったのは3年のころ。
2年の頃は確か"常時滝行中"にした。
つまり、汗のかき具合が常に尋常じゃないという意味で、スポ祭中なんてまさにそれをお披露目する絶好のチャンスだ。
と言いながら、いつも汗やばすぎて、せめてネタにしたかったという私のいたたまれ無さ。
いとおかし。  

汗っかき対決も負ける気がしないぜ!

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