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クリスマスを前に『あの子は良い子?悪い子?』前編

サンタのおじさん、今年もクリスマスに来るってよ。

『サンタクロースは優れた自然免疫を持っているから、COVID-19には罹りません』by Dr. ファウチ

 11月22日のUSA Today紙にて、
 アメリカ国立アレルギー&感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士はこう述べ、子供たちへ『サンタクロースは万全。心配しないで大丈夫だ』と呼びかけました。


 2020年、サンタクロースは予定通りクリスマス・イヴに訪れるでしょう。

 さて、サンタクロースといえば【良い子】にプレゼント。
 我が子の心根が本当に良い子であることは当然ご存じでしょうが、ときに疑ってしまうこともあるのではないでしょうか?
 これからするのは、ある悪戯っ子が仕出かしてしまったトラブルのお話です。


『洒落にならない悪戯:和希は悪い子?』前編


「御免!!」
 怒気の強い男の声と共に、和太鼓のような大きなノックの音が響き渡る。
 買い物が済んで居間でくつろいでいた実里は驚き、慌てて玄関へ向かった。
 ドアレンズからチラリと外の様子を窺うと、そこには怒りで顔を真っ赤にした老人、そしてその隣に白い野球帽を被った子供が見えたので、実里は急いでドアを開けた。

「……この子はお宅の子さんですかな?」
 俯いていて顔を見せないが、息子の和希に間違いないだろう。
「はい。あの……、ウチの子が何か悪戯したのでしょうか?」
「何もしてなきゃ怒りゃせんわい。この坊主、ウチの畑の野菜に殺虫剤をかけよったんじゃ。ええか、奥さん。一個二個じゃねぇんだ、明日出荷する数十個がパアだ」
 それが事実なら、老人の怒りはもっともだ。和希をよく見ると、その手には実里がゴキブリ退治用に購入した殺虫スプレーがしっかり握られていた。
「子供のした事だからと大目に見てやりたいが、ワシらも生活が掛かっている。相場から計算して最低限度は弁償してもらう、分かったね?」
「はい、申し訳ありません」
 実里はさり気無く和希を自分の元に寄せると、押さえつけて無理矢理頭を下げさせた。
「二度とこんな事は起こさんよう、奥さんからもきっちりお灸を据えなさいよ」
「この子には、きつく言ってきかせますので」
 老人はまだ言い足りなそうで、ブツクサ呟きながらも立ち去った。

* * *

(さて、どうするか。和希は悪戯っ子だが思いやりのある子だ)

 実里は和希を連れて居間に戻り、先ず麦茶を一杯飲ませると、ソファに座らせて自分はその前にしゃがんだ。
(……頬の強張りは大分和らいでいる。うん、大丈夫そうね)

「ねぇ、和希。あのおじいさんが言った通り、和希は外で殺虫剤をたくさん掛けたの?」
「……うん」
「お友達と一緒に?」
「ううん、ちがう」
 どうやら自分の考えで行動を起こしたようだ。慎重に訊かなければ。
「うーん……、お母さんには分からないなあ。和希は何で殺虫剤を掛けたかったの?」
 和希は必死に考え込んだ。この子は他人に説明するのがとても不得意なのだ。

「……えーとね、昨日、じいちゃんがソウショクはいけないって言ってたの」
 ゴールデンウィークの帰省を見送り、五月の最終日曜日であった昨日、久しぶりに帰省した実里親子。その日は一日中、父に和希を預けていた。
(クソ親父がまたろくでもないことでも吹き込んだのだろうか?)

 後編へ続く……


問題:和希はどうして畑に殺虫剤を撒こうと思ったのでしょうか?

 『他人に迷惑をかけるようなことはするな』と叱りつけるのは簡単です。

 しかし、万事それで良いのでしょうか?
 もしかしたら、その子なりに理由があったりするかもしれません。ちょっと頭の体操をしてみましょう。


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