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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2019年2月の記事一覧

情報の足し算と引き算。

情報の足し算と引き算。

偉そうで、気むずかしそうで、怖そうな人が多い。

あまりその業界にくわしくない人間としてのぼくの、アニメーション監督に関する先入観である。悪口を言っているように聞こえるかもしれない話なので個人名を挙げることは避けるけれど、大御所とされるアニメーション監督の方々は、その作品のすばらしさとは別に、どこか偉そうだったり、気むずかしそうだったり、怖そうに映ってしまう。少なくともインタビュー記事を読むかぎり

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端境期のもどかしさ。

端境期のもどかしさ。

ああ、なんかアメリカに渡った感がある。

『嫌われる勇気』のアメリカ版が、あちらのオーディオブック大賞である「2019 Audie Awards®」のビジネス・自己啓発部門で、ファイナリストにノミネートされたのだそうだ。英語版のウィキペディアによるとこの賞は、「オーディオブック界のオスカー」と呼ばれているほどの賞らしい。

英語が不得手なので詳細はわからないのだけれど、『嫌われる勇気』は米ブルーム

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最近好きなインスタントコーヒー。

最近好きなインスタントコーヒー。

うちの会社には、けっこう高いコーヒーメーカーがある。

豆についても、あそこがおいしい、この豆がうまい、あの店が出す季節限定のこれは最高だ、みたいな情報はそれなりに持っている。周辺に何人かいるコーヒー党の方々にはおよばないものの、ちゃんとコーヒーが好きな人間だと、自分では思っている。

なのに最近、インスタントコーヒーばかりを愛飲している。好きな人たちのあいだでは有名な、マウントハーゲンというコー

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おれに幸あれ。

おれに幸あれ。

ORIGINAL LOVE のニューアルバムが、すばらしかった。

買おうと思ったきっかけは、田島貴男さんのツイッターだ。田島さんは本作のことを「僕のキャリア最高作」だと書かれていた。ピチカート時代から数えてもとんでもないキャリアを誇り、酸いも甘いもかみ分けたはずの50代を迎えた田島さんが、堂々と「キャリア最高作」と胸を張れるその事実におどろき、なにはなくとも買ってみた。

聴いたのは週末、犬を後

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賞味期限と消費期限。

賞味期限と消費期限。

お菓子でも、サンドイッチでも、お弁当でも。

店頭で売られる食べものには、賞味期限と消費期限のいずれかが記載されている。このうち消費期限とは、その期日までなら「安全に食べられる」、という期限。逆にいうと、その期日を過ぎたものは衛生上食べないことを推奨するもので、弁当やおにぎりなど、傷みやすい食品に表示されている。

一方の賞味期限は、スナック菓子や缶詰、インスタントラーメンなど傷みにくいものに記載

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たまには手紙もいいもので。

たまには手紙もいいもので。

そういえば最近、手紙というものを書いていない。

メールはたくさん書いているし、LINEのスタンプもせっせと送っているし、写真や動画も日々送り合っている。けれども手紙、おのれの手で紙にしたためたレターは最近、ほとんど書いていない。

悪筆であるぼくの手紙には、手書きならではの味わい的なものは皆無だと思っている。もらった人は「なんてクセのつよい字だ」と思うだろうし、単純に「読みづれえな」と思うだろう

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がんばりすぎる人たちへ。

がんばりすぎる人たちへ。

TLで流れてきた記事をきっかけに、がんばりすぎる人について考えた。

おそらくぼくは、がんばりすぎる側にいる人間だ。本をつくるときでも、それ以外の仕事でも、適度に肩の力を抜くということがあまりなく、どうしても「がんばり」が過ぎてしまう。天賦の才を持たない人間のひとりとして、そこに投じる時間や労力は多いほうがいいとは思うのだけど、「がんばり」が自己目的化してしまうのはちょっと違う気がする。

たとえ

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工夫ばかりになってないか?

工夫ばかりになってないか?

きょうの昼、出前のかつ丼を食べた。

食べながらふと、おれはこれをつくれるのかなあ、と思った。つくれねえよなあ、と思った。この場合の「つくれねえ」とは、レシピ本を見ながら調理できるかできないかの話ではなく、かつ丼なる料理を発明することができるのか、という意味の話である。

それなりの面倒を乗り越えてサクサクに仕上げたはずのとんかつを、あまからい出汁たまごでとじて、べちゃべちゃにする。それをごはんの

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赤ちゃんと犬。

赤ちゃんと犬。

ホースラディッシュ、という食べものがある。

ステーキやローストビーフの薬味として重宝され、むかしのレシピ本などでは「西洋わさび」と表記されることも多かった植物である。しかし実際の味からすると、わさびというよりむしろ(ラディッシュの名のとおり)大根に近く、たとえば寿司にホースラディッシュを代用することはできない。それではなぜ「西洋わさび」の日本名がついたかというと、すりおろして使用する辛味をもった

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指にまかせて、気の向くままに。

指にまかせて、気の向くままに。

クレートということば、犬と暮らすようになるまで知らなかった。

犬小屋として利用する方々も多い、強化プラスチック製の箱というか、移動用のケースというか、ことばで説明するのは面倒なので写真を貼ると、こういうものである。

うちの犬、ごはんのときにはクレート内に待機してこちらの準備を待ち(上の写真はまさにその時間だ)、運ばれてきたそれをクレート内で食べる習慣ができている。彼にとってクレートは、食堂であ

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信じるなを信じるな。

信じるなを信じるな。

30代以上を信じるな。

ドント・トラスト・オーバー・30、ですね。浅学にしてパンクムーブメントのころに出てきたことばだと思っていたのですが、さきほどネット検索したところベトナム反戦運動やヒッピームーブメントのなかで生まれたことばなのだそうです。ああ、これまでに何度かパンクとこのことばを結びつけて語ったはずだよなあ、おれ。知ってるつもりって、ほんとうにおそろしいものですね。

で、ぼくはロック少年

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休日はなにをされていますか?

休日はなにをされていますか?

これを書いているぼくの隣でいま、犬が寝ている。

ぼくにとってはまだ早い時間、なにゆえ隣に犬がいるかというと、きょうは会社に行かなかったからだ。会社に行かずとも仕事ができてしまうのは、インターネット時代のありがたさであり、うとましさであり、ぼくなどはつまらなさのようにも感じているのだけれども、ともかくきょうは会社に行かなかった。メールの返信以外、仕事もしていない。つまりは本日、おやすみをとったのだ

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わたしを救ったオリンピアンのことば。

わたしを救ったオリンピアンのことば。

オリンピアンということばがある。

オリンピック出場経験を持つアスリートを指すことばだ。オリンピックということばはもう完全に日本語だけれども、オリンピアンにはどこか崇高な、いかにもギリシャっぽい、オリンポスの神々を思わせる響きがある。

そのテレビ視聴者数においてしばしば比較されるサッカーのワールドカップにはたぶん、オリンピアンに該当することばはない。英国生まれのスポーツなので英語ベースで「ワール

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夏と冬と、あのひとたちと。

夏と冬と、あのひとたちと。

ほんとうだったら今日みたいな日は、なにも書きたくない。

もう少し正確にいうなら、なにも考えたくない。たとえこんなものであってもやはり、なにかを書くにはそのぶんなにかを考えなきゃならない。いまはどうもその体力がない。

きのう脱稿した原稿、さきほどおおまかな推敲はやり終えた。「わあ、このまま出してたら大変なことになってたぞ」な誤字脱字や拙劣な表現はあったものの、総じて「おお、このまま出してもぜんぜ

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