ファンって全員キモいと思ってた

高校生の頃からずっと、推しは女性アイドルだった。
地方に住んでいたから、情報収集のために公式の発信だけじゃなく、掲示板やファンのSNS、ブログも読んでいた。
推していたアイドルはそのうち社会現象と呼ばれるようになった。握手会に長蛇の列を作るファンの様子がテレビで流れた。一人で何百枚もCDを買うファンも珍しくなかった。最初期の頃からのファンは有名になり、ファンの間で崇められていた。ファンは加速度的に増え、色んな問題や事件を起こした。メンバーへのつきまといが問題になるのは日常茶飯事だった。気に入らないメンバーを結託して攻撃するファン、自分が認知されているかしつこく本人に確認し、覚えていなければ嫌味を言うファン、未成年のメンバーに握手会でプロポーズして出禁になり逆上したファン……。
ファンってキモい、と思った。

自分を含めて、ファンって全員キモいから、見つからないように、キモいことがばれないように応援しなきゃと思った。せっかく上京して、大好きなアイドルに”会いに行ける”状況になったけど、私は一度も現場に行かなかった。
とにかく本人にマイナスな感情を与えてしまうのが怖くて、出来るだけひっそりファンでいたかった。ライブもイベントも握手会も行かなかった。SNSはフォローするだけで、コメントはしなかった。メディア露出の感想を書く時は、鍵アカにこっそり書いた。
大好きだった推しメンの生のステージを見ることも、握手会に行くこともないまま、目立った活躍もなく彼女はひっそりと卒業していった。

人前に立つ仕事をした経験がない私には、ファンに推される、応援される気持ちが分からない。
嬉しいなんてはずはないんじゃないか、みんな我慢して嬉しい振りをしているんじゃないかと思っていた。(これは今でもちょっと思っちゃう。)
でも私が言葉を選んで、慎重に考えて行動して、推しメンに気持ちを伝えていたら、少しだけでも彼女のことを元気づけることができたんじゃないかと今もたまに考えてしまう。でも結局、嫌な思いをさせてしまうことになっていたのかもしれない。自信がない。何もしないを選んだんだから、何もできなかったのは当たり前で、だとしたら私がファンでいたことはプラスもマイナスも生み出さなかった。後悔しているとしたらそのことだと思う。

今、初めて芸人さんを応援するようになり、はじめは思っていたよりもずっと近い距離感に戸惑いながらも、どうにかプラスな存在になりたいともがいているのは、今度こそちゃんとファンを名乗りたいと思っているからかもしれない。
コメントするのもメッセージを書くのも、ここにこうやって書き散らすのも毎回怖い。本人が見たとしたらどの言葉をどう感じるか、私には絶対に分からないから。たとえ感想を聞けることがあったとしても、口では「嬉しい」と言ってくれるに決まっているからだ。でも、その怖さを乗り越えて、私が感じたことを書きたい。できれば応援していることが伝わってほしい。あわよくば、興味を持って見てくれる人が増えてほしい。

私が応援している芸人さんのファンの方たちは素敵な方が多い。と思う。初心者すぎてほかの現場の雰囲気が分からないから、体感でしかないけれど。
ライブが始まる前のワクワク感、皆で笑いながら拍手する時の会場の雰囲気、ライブ後の多幸感を共有できていることに安心する。それぞれスタンスは違っても、ステージの上の芸人さんが好きという気持ちは同じで、その芸人さんを面白いと信じていることも同じで、そんな人たちが同じ場所で笑っているというのは、本当に幸せなことだなと思う。
あの頃と違って、私もファンの一人と認められていると嬉しいな、と素直に思える。

今も推しているアイドルがいて、アイドルのファンだってキモい人ばかりじゃないということも分かってきた。心からアイドルのためになることを願って応援している人の方が多い。あの頃、キモすぎて目立っていたファンたちの情報を目にしたために随分拗らせて回り道をしてしまったけど、ファンって楽しいし幸せ。だからこの幸せをくれる相手に、何か少しでも、お返しができるといいなと思う。

でもやっぱり「応援されるのって嬉しいでしょ!」スタンスは危険だということは今も思ってる。自分が考えすぎる性格で、基本的に重くなりすぎることもよく分かってるから、出来るだけ「イェイ!」って感じで応援を続けたいと思います。目指せポップなファン🙋‍♀️

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