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僕の荷物は滑り続ける

ここはどこだろうと思ったら、大型トラックが引っ張るトレーラーコンテナの中だった。

コンテナの積荷は空になっている。僕は旅をしているのだろう。バックパックしてきた荷物(といっても、使い込んだリュックサックがひとつだけだ)を背中から下ろしてコンテナに無造作に置き、僕はそのままどこかへ行ってしまう。

トレーラーの運転手の姿も見えない。僕は、もうすぐ大型トレーラーがどこかへ(恐らくは次のターミナルに荷物を積みに、あるいは自分の町に帰るために)走り去ってしまうことを予感している。

なのに、僕は自分の荷物をコンテナに残したままどこかへ行ってしまうのだ。

やがてトレーラーが「停まっていた」場所に僕が帰ってくる。

僕は取り返しのつかない失敗をしたことに気づく。そのあたりがどうも矛盾している。僕は、半分、こうなることを分かっていながらこんな行動を取ったのだ自分でもよくわからない。

「僕の荷物」と小さく声に出して言ってみる。一層、喪失感が増す。僕は取り返しのつかない気分の中で考えている。

トレーラーが立ち寄りそうなターミナルに電話をしてみるべきだろうか。それとも運転手がコンテナを覗いたときに、僕の荷物に気づいてくれて、僕に連絡をくれるのを待つべきだろうか。

けれども、すぐに別の考えが頭をよぎる。それはすべて都合が良すぎる話じゃないかと。

運転手にしてみれば「勝手に」自分のトレーラーのコンテナに侵入した奴の荷物など、どうでもいいのだ。むしろ不愉快な出来事だろう。僕の頭は鈍く痛みだす。

僕はできることなら誰の手も煩わせたくはない。それなのに、こうして自分勝手な判断、思い込みで結局、誰かに迷惑をかけているのだ。

僕は運転手に話し掛ける。

「すみません。勝手なことしちゃって」

運転手は、僕のことなど始めから存在しなかったように、黙って積荷と伝票を見比べている。

僕は、この運転手が口笛を吹きながら、大型トラックでトレーラーを牽引しながら風を切って走る姿を想像する。

僕の荷物が、カーブを曲がるたびに逃げ場を求めてさまよう鼠のように大きなコンテナのあちこちを滑り続ける。

運転手の視界を遮るものは、なにもない。