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正解の街から少し離れて

怪しい佇まいの街が再開発なんかで姿を消していく。まあ、いまに始まったことでもないのだけど。

なぜか黒い油の塊がべっとりとついた電線が絡み合い、がらくたなのか店の設備なのか判別できないものの上に野良猫が寝そべるような凸凹した店が並ぶ路地。

現在の基準で言えば法的にも景観的にも、いろんな意味でダーク寄りなごちゃつき感。

そういう光景を見て、嫌悪感を持つひともいれば、なんとも思わないひと、僕みたいにわりと好きだなとなってしまうひといろいろだ。

なんで、そんなところに気持ちが持っていかれるんだろう。

べつに、すごくそういうごちゃついた路地とか店に入り浸って飲んだくれてるわけでもない。なんていうか、そういう場所、光景が存在することがどこか落ち着くのだ。

馴染みの場所でもないのに気持ちが馴染む。たぶん、伝わらない。

でもまあ、そういう場所はこれからも消えることはあっても増えはしないんだろう。それもわかる。

ネットだってそうかもしれない。ほんとにあかん闇なやつは別として、いつの頃からかネットの世界もすっかり、ごちゃついたのは整理されて「望ましい」雰囲気になってる。少なくとも見た目的には。

いい表現をすれば、ポリティカル・コレクトネスにもちゃんと対応できる「正解の街」の体裁になっていて、あまりよくない表現をすれば綺麗ごとで整えられて。

だけど、ほんとにそれが人間のいる場所なのかどうか、ちょっとよくわからない。

もちろん、みんなが同じ街で生きていく上で「正解」も必要だし、みんなも無法地帯を望んでるわけでもない。なのだけど「正解」も「そうじゃないもの」も、どっちもちゃんと存在できる気持ちの豊かさってあり得ないんだろうか。

どこにも持って行き場のない気持ちにも、ちゃんと居場所のある街。

そんなことを最近もつらつらと考えてる。


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林伸次(BAR BOSSA)
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