なぜラブホの名前はそうなるのか
小さい頃からラブホテルの名前が好きだった。
いや、変態の子の話ではない。真面目な話。
親が運転する車に乗せられて移動していると、高速道路のインター近くになぜか密集しているラブホテルのネオン看板が気になってくる。
どう考えても子供にとっては、あの、秩序があるようでない光はショッピングモール的なイルミネーションとの区別がつかない。
なかでも、漢字のラブホ名がお気に入りだった。これもすごく誤解を招く言い方だな。まあいいや。
ホテル紫煙。ホテル天空城。ホテル王露螺……。
そもそも英語の名前は子供には言語として認識できないし、カタカナ名は逆に読めてしまうのでおもしろくない。漢字でしかも光輝いているというのがツボだった。
子供でも読めそうな「ホテル北京(いまから考えるとなぜそれなのか感がすごい)」とかだと、親に「あれってホテルペキン?」とたずねたりして、「へー、読めるんだ」と言われたりしていたけど、嫌がらずによく答えてくれたと思う。ごめん、親。
まあでも、ラブホテルの名前は一部では学術的な研究対象にもなっているのだから、べつに子供が興味を抱いてもおかしなことではない。
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いまでも、たまに知らない街で目にするラブホテルの名前が気になる。ただ、最近は、漢字名だけのところはすごく少なくなっている。昭和が遠く過ぎ去り、平成も幕を下ろそうとしている時代には当然なのだろうけど。
『ホテル俺の庭』
なぜ、庭? 俺の部屋とかじゃなくて庭でいいのか。若干、ワイルドな感じがしなくもない。「俺の部屋行こうよ」より「俺の庭行こうよ」と言われたほうが。
だけど、センス。僕がラブホのネーミングを頼まれたとしても(頼まれない)、ホテル俺の庭の発想には辿り着きそうもない。そこが、なぜだか少し悔しいのだ。