写真_2014-01-11_19_47_14

胸の傷

ここのところ、朝起きたら自分の首から胸にかけて引っかき傷ができている。

「どしたの、それ?」

だいたい妻が先に気づく。僕は言われて「え?」てなってシャツを少し引っ張って覗きこんで確かめる。首部分は自分では見えないけど、たしかにある。肌がそこだけ赤くなったいくつかの線状の傷が。

まだ少しぼんやりしているせいか、とくに痛くはないので自分では気づかないのだ。

「ネコ? 新しい女?」

妻が言う。いやいやちょっと待って。うちにはネコも新しい女もいない。
っていうか「新しい」って何? ロシアン・ジョークでしょうか。ほんとそういうのやめてほしい。

まあ、たぶん寝ている間に自分の爪で引っかいているんだろうと思う。

だけど、傷からみれば無意識とはいえ、結構痛いんじゃないか。そんな自傷行為を僕は寝ている間に行っているのだろうか。わからない。

ビデオでも回して録画すれば「あー、やっぱり」ってなるのかもしれないけど、自分の寝相なんてとくに見たくない。幼子の寝相ならアクロバティックでも何でもかわいいんだろうけど、野郎の寝相を録画させられるメモリーが不憫だ。

なので、真相は不明なのだけれど、できれば引っかき傷なんてつけたくない。やっぱりちょっとひりひりするし。

対策するなら

1)手袋はめて寝る
2)寝袋で首から下を完全ガードして手が入らないようにして寝る
3)寝相ポリスを配備して引っかきそうになったら「ピピー」と警告する
4)寝ない

のどれかだと思うけど、もしかして全部の対策をしても引っかき傷が増えてるんじゃないかという気もしなくもない。そうなったら軽いホラーだ。

あと、もしかしたらいま全国的にそういう症状が増えていて、みんな朝起きたら「え?」ってなってるのかもしれない。

病院では「朝、起きたらこんな引っかき傷が……」という人が受付にあふれ、診察室のドアを開けると、そこには見覚えのある夜の店の――。