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修正依頼に感動した話

「ね、これすごくない? 感動するんだけど」

妻がパソコンの前で感嘆しながら僕に言ってきて。何になのかというとクライアントから送られてきた「修正依頼」のメールです。

あ、妻は「ふみぐら社デザイン室」という紙メディアのデザインをやってます。

とあるクライアントさんの三つ折りリーフレットのデザインに対しての修正依頼が書かれたメール。

ふつう、修正ってあんまり楽しいものじゃないというのが一般的ですよね。中には「は?」とコエカタマリン(懐かしいドラえもんの秘密道具!)になって出てしまうような理不尽なのもあったりして。

なのに、修正依頼のメールが感動するってどういうことなのか。まあ、僕も間接的に関わってるので確認しました。

※細部は守秘義務的なあれにならないように脚色してますが実話です。


そしたら――。

まず最初に飛び込んできたのが

《デザインが入るとわくわくしますね!》

という言葉。いや、言葉にするとふつうかもしれないですが、なかなか最初にそういうことを伝えてくれるクライアントってあまりいません。

べつに、だからやらないところがダメってわけではなく、修正依頼のフェーズでは端的に「こことここを、こんなふうに」という指示を依頼するのがメインなので、なくてもふつうなんです。

そして《これいいねってスタッフと感動しました。これをさらに劇的レベルに持っていきたいので修正をお願いします!》と。

このメールの入り方、良きです。

修正ってやっぱりどんなものでも大なり小なり負荷のかかるものなので、そこを気持ちよく相手に伝えるのって大事。なんのための修正という部分が見えないと手を動かすほうはもやっとするので。

いきなり何もなく「お世話になっています。以下、修正お願いします」よりは、やっぱり何か気持ちが入ってるほうが修正の手を動かす側もポジティブになるじゃないですか。

以下、こういうところが気に入っていて、こういうところはこうしたいという具体的な修正箇所が的確に示されていて、それもすごく助かるわけです。

とにかく、一方通行で「ここを直してください」という書き方じゃなく、一つひとつの要素に丁寧に感想の表現とセットで必要な部分は修正指示が出されてる。

それを見ると、つくってる側も「あ、本当に気に入ってくれていて、もっと良くしたいんだな」が伝わってくる。ここ大事です。

リーフレットのデザインは想いを持ってるクライアントと、それを手に取った人とのコミュニケーションに落とし込んでデザインするデザイナーの協働作業。広い意味とグラフィックな意味の両方のデザインですね。どっちからの言葉も一方通行だといいものにならないから。

        ***

で、極め付けだったのがこんな言葉。

《とにかく☆☆色がクールで素敵です。この夏、この色のТシャツを買うぐらい好きになってきました》

裏面に引いた色についてのコメント。なかなかないですね、こういうの修正依頼のメールで。

で、そのあとに

《だけど、ここは△△に持っていきたい場面なので、悩んだのですがお客様の気持ちをさらに高める○○色でお願いしたいです》

といういちばん大きな修正ポイントが。色の修正って結構大きいんですね。いろんなバランスの調整も入るので。

でも、前段であんなふうに言われたら妻的にも「喜んで修正するよね」と。


こういうの「テクニック」の文脈じゃないんです。あくまで「気持ち」の話。

修正をお願いするほうだっていろいろ考えるわけだし(しかも通常業務にプラスしての作業)、修正作業をする側も仕事だからやるのは当然だけど、せっかくならお互いに「いいものになりましたね」と言えるものにしたい。

だから修正依頼のこんな何気ないことが大事だったりします。

え、そんな感動するようなこと? と思う人もいるかもしれないけど、日々あんなこんな作業に埋もれがちな中では、修正依頼のやりとりと言えどもちゃんとお互い(リモートでも)人間が向こうに見える感じでやるのって必要ですよね。

ポイントをまとめると、仕事で修正依頼を誰かにするなら

*1 まず受け取ったお礼と感想
*2 さらにいいものに引き上げたいという表明
*3 修正箇所は、修正しない箇所の気に入りポイントとセットで
*4 いちばん大きな修正は、さらにその意図(思考の過程)も

ということをちょっと意識してお願いするといいのかも。デザインの修正だけでなく、基本、どんな分野でも共通するところはありそうです。