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「わかりやすさ」という進撃の巨人を前に僕らは

くるりの岸田さんが岸田日記で毒を吐いてた。ネット的な意味でもリアル生物的な意味でもだけど。

詳細はつまびらかにしないけど、なんかじわっときた。これは、あまり笑える意味でのじわるではなく。

何だろう。表現する世界も対峙しているものも、それぞれ違うけれど、本質的には実は同じ壁(敵といってもいいけど)を相手にしてるんじゃないかと。

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岸田さんの音楽のつくり方は、いい意味で極端だ。自分に引っかかるものがあれば、それがどんなに世間で評価されてなくても偏執的(褒め言葉です)に掘っていくし、自分に引っかからないものはどんなに簡単にやれる方法があっても乗っからない。

まあ、言ってしまえば面倒くさい音楽をつくってるんだと思う。でも、それが好きなんだからしょうがない。どこかで現実との折り合いをつけるしかない。自分を寄せるんじゃなくて。

そういうやり方って、ものをつくる仕事はみんなそうだと思うけど、ほんとあれなんですよ。自分でも面倒くさい。こっち行ったらラクなんだけどなってわかってるのにあえて行かないし行きたくない。

でも、たまにそういうやり方で、やっぱりやって良かったと思える瞬間があるからやるわけで。

(関係ないけど『尼崎の魚』なんて、そういうわかりにくいけどわかりやすいが昇華した初期の名曲だと思う)


岸田さんはミュージシャンとしての自分を「非効率でエゴイスティック」と表現してるけれど、僕もライターとしての自分は非効率の塊なのを自覚してる。


で、話を戻すと音楽にしろ文章にしろ、つくり手の前にそびえ立っているのは「わかりやすさの壁」という巨人なのかもしれない。もっとわかりやすく「いいね」されるものを、もっとわかりやすい速さで拡散されるものを。

本当は、わかりやすいものほど、難しいことをちゃんと理解して消化できてないと「本当にわかりやすく」なんてつくれないのに、なぜかそこはスルーされたまま。

そいつを倒すか乗り越えないことには、つくり手の未来はない。


かなり厄介だけど、そこを諦めてみんなで自主的に「わかりやすさ」に負けたら、僕らはどこに向かおうとしてるんだ?

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受け取り方によってはどんよりするもの書いてしまったので口直しに貼っときます。なんかいま聴きたい感じの曲。くるりじゃないけど。

El Perro Del Mar - "Breadandbutter" 「パンとバター」