おかしなことを堂々とやる世界とすれ違ったとき
「すみません、写真撮ってもらっていいですか?」
高速道路のサービスエリア(エキナカみたいなとこだけど)の通路で、突然、大学生っぽい男の子に声を掛けられた。
え、なんでここで? だって、ここただの通路だよ。背景だってお店とかごちゃついてるし。
そう思って周りを見ると、男の子の後ろに同じような大学生が十四~五人集まっている。何かのサークルでのツアーの帰りなのかもしれない。
何人かはスマホをいじり、何人かは馬鹿話をして笑い、残りの何人かはこっちを見ている。面倒くさいなと思いながらよく見ると、大学生たちの集まってるちょうど真ん中あたりに、お土産を積み重ねてつくったらしいタワーが鎮座していた。
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僕に声を掛けてきた男の子はスマホを僕に預けようとしながら、一瞬後ろを振り返って、お土産が見事なオブジェになったタワーを「どうすかこれ」的な顔をしている。
いやいやいや。それ、ちょっと間違ったらバカッター行きだろ。ここ、お店の前でみんなが通る通路塞いじゃってるし、そこでオブジェつくって呑気に集合写真撮ってたらだめじゃない。
SNSに写真あげて一瞬喜ぶつもりなのかもしれないけど、僕は「いや、これだめだよ」と男の子に言う。
その様子をうかがっていた何人かが、まじかみたいな顔で「ウェーイ」と声をあげた。まさか写真撮ってもらうのを断られるとは思ってなかったのだろう。
僕に声を掛けてきた男の子も「えっ」という顔をしてたし、丁寧に写真撮るのを頼んだのになんで? と素直に思ってるのかもしれない。
そう。たしかに彼らに悪意はないのだ。純粋にピュアに(大事なことなので二度言いました)自分たちの記念にやってるだけ。しかも丁寧に人に頼んでる。
だけど、集団で通路を塞いで買ったばかりの商品でタワーオブジェつくって写真撮ってもらおうとか、やってることそのものがおかしいことに気付けよ、と思う。
なんだろう。急いでなければそこまで話をするべきだったのか。でも、そんな話をされたところで「ぽかーん」だっただろうな。
いや、引っ掛かってるのはそこじゃないのかも。これはもしかしたら、ほんとうにわかり合えないことなのかもしれない。
明らかなわかり合えなさではなく、すぐそこに手を伸ばせば触れられるようなところにある「現実」のわかり合えなさ。位相のずれ。
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僕は、彼らと別れたあとも、意識の特定の部分だけが透明になってしまうような感覚がしばらく残っていた。
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