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後ろポケットに宇宙を連れて僕は

僕はジーンズの後ろポケットにモノを入れない。べつにジーンズじゃなくても、どんな種類のパンツでも入れない。

よく後ろポケットにウォレットチェーン付きの財布だとか、鍵やアクセサリーなんかを絶妙なバランスで突っ込んで歩いてる人を見かけるけれど、すごいなと思う。

自分にはできないのだ。ファッション的にとかではなく落ち着かなくて。

自分の後ろポケットは、どこに向かって歩くときも背後になる。当たり前すぎてちょっとなに言ってるかわからない。

なんだけど、自分の後ろにあるということは、自分の意識からも少し遠いのだ。自分の意識が±0の位置を見ていたとして、後ろポケットはマイナス1.5ぐらいの位相に常にある気がする。

うん。まったくうまく説明できていない。まあ、なんとなく後ろポケット空間だけ宇宙がズレてる気がするわけです。

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せっかく後ろにもポケットがついているのだからと、何度か後ろポケットに財布やスマホを入れて歩いてみたこともある。でも、どうしても違和感が邪魔してうまく歩けなかった。

そのうち、一体、後ろポケットというのは本来何のためについているんだろう(そういえば後ろポケットのついてないジーンズって見たことない)と考えこんでしまった。

そこに存在することは分かっているのに、自分にはどうすることもできないもの。

宇宙空間に手を伸ばしてもなにも掴めないように、僕はジーンズの後ろポケットをなにも使うことができない。

仮に、僕がジーンズを捨てたとしても僕の後ろポケットにある宇宙は消滅することもなくひっそりと存在し続けるのだ。

誰にも使われることなく、ただあり続ける後ろポケット宇宙。

そのことを思うとき、僕は少しだけ哀しくなる。

まあでも、それはそれとして、森の中で後ろポケットから取り出して飲むスキットルに入ったウィスキーは、なんとなくおいしそうな気がするのだけれど。