立ち昇る
ぼくはお線香の煙が大好きだ
ゆらゆらと
いい香りをしながら上っていく煙
目を閉じて
思いきり息を吸うと
とてもいい気分になる
縁側で
このことをおじいちゃんに話してみた
夏の夕方
ざっと天気雨が降って
今は止んでいる
もわっとした空気が立ち上る
渦巻きの蚊取り線香から
立ち上る煙を
おじいちゃんと見ながら
ぼくは話す
おじいちゃんとのこの時間も
ぼくは大好きだ
おじいちゃんは
ぼくの話を聴いて
お線香の話をしてくれた
お線香はな、一度火を付けると
同じ速度で燃えて
最後の灰になるまで燃え尽きる
その上周りにいい香りまで残す
お線香は人生と同じなんだよ
自分の人生の目標に向かって精進する
精進したあとにその人の徳が残るんだ
そうか
だからお線香を見ていると
しあわせな気持ちになるんだね
お線香をお供えするときは
3本がいいと言われている
なぜだかわかるかい?
えっ?
亡くなった人1人なら
その人に1本でいいんじゃないの?
お線香をお供えすることは
ご焼香と呼ばれているのはわかるかい?
ご焼香をするときは
1本は仏さまに帰依する心
1本は仏さまの教えに帰依する心
1本は仏さまの教えを実践する決意を表す
だから3本なんだ
仏さまを敬って
仏さまが残した教えを引き継いで
自分の人生の目標を
今世この身体で実現する
そうやって魂は
受け継がれていくんだよ
おじいちゃん
ぼくはますますお線香が好きになったよ!
これからは3本にする!
3本お供えしたら
いい香りも3倍になるね
そうだな それがいい
ぼくとおじいちゃんは
にっこりと微笑んで
空を見上げた
お線香の煙がくるくると渦を巻きながら
空へ立ち昇っていた
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