マジョリティになれなかった僕。

きっと心のどこかで過半数の多い方にいたかったのだと思う。
普通に育って、普通に暮らして、家族ができて、幸せに暮らす。
困難もそれなりにあるのかもしれないけど、普通。普通を目指してきた。

長崎の山の上に生まれ、ごくごく平凡な幼少期。
家族のおかげで、お金に困ることもなく、穏やかに平和に育ったと思う。

中学校から少し風向きが変わってきた。
田舎では、少し進学率の良い学校に進学。
そこでも、すごく平凡に生きていた。
少しの変化というのは、男の子を好きになったこと。

かといって、漫画や小説に出てくるような悲劇的なことはなく、どちらかというと、友人にも恵まれ、そんなに深く考えることもなく、同級生が好きだった。
毎年好きな子ができたので、高校までで5〜6人は好きだったと思う。
どうこうなるわけでもなく、先輩やクラスメイト、ちょっとしたことでときめいた。
節操がなかった。


高校を卒業して、進学する頃、急に思春期が遅れてやってきた。
自分は同世代より大人っぽい、なんて思っていたけど、そうじゃない。
どちらかというと、生育が遅れていたのだと思う。

とにかく遠くへ行きたかった。誰も知らない場所で、新しく自分として生きて行きたい。
漠然とした、将来、生きることへの不安を抱えつつも、このまま、すこーし自分を隠しながら生きていくことが息苦しかった。自分が自分じゃないように思えることが多くなった。

そして、北海道へ逃げた。
1ヶ月くらいだけ、自由を感じた。
そのあとは孤独だった。
ここから、マジョリティーへの道が崩れ出す。

結局場所を変えても、何も変わらなかった。
友達にもずっとうっすら嘘をつき、
本音をどこか隠して、自分にもうっすら嘘をつき。
そんでもって、家に引き篭もった。
初めて言葉にしたけれど、あれは引きこもりだった。
友達に自然に思われる程度に顔を合わせ、家と殻の中に引き篭もる。
それが続いて、結局、友達にも会わなくなった。

元々、そこまで興味がない学部に、九州から遠いからという理由だけで進学した。
今思えば、すごくありがたいことで、すごく親不孝なことだとわかっている。
でも、とにかく遠くへ行きたかった。

遠くで1人で生きれば変わると思っていた。
何かが、自然と変わると思っていた。
でも、長崎にいる頃から一歩も変わっていなかった。
ゲイであることがきっかけにはなったけど、自分が弱くて、全方面が崩れはじめた。
途中で大学を休学した。
そして、大学を辞めた。

このままでは生きていけないかもしれない、じゃあどうして生きていくか。
そして、関西の学校へ行き直すことにした。そこが大きな転機になった。

元々、お菓子を作るのが好きで、いつかお店がしたかった。
いろんな人に言っていたが、それは、働いてお金を貯めてやろうかな、くらいだった。

やりたいこと、と考えたときに、お菓子以外には思いつかなかった。

大阪の専門学校に通い始めて、お菓子の世界に全然向いていないと思うほどに、不器用だと自覚したけど、そのお話はまた今度。

大阪では友達がたくさんできた。
学校の友達。
バイトの友達。
そして、ゲイの友達。

ゲイの友達ができたのが初めてだった。
みんなそれぞれで、オープンな人もいれば、隠している人もいる。
でも、みんなしっかり自分の人生を歩んでいて、かっこよかった。

そのときに初めて、自分で自分のことを受け入れていないことに気づいた。

同性婚とか、権利がとか、いろんな人が頑張っていることも知っている。
いろんな人のおかげで、随分と暮らしやすくなったことも知っている。

でも、何より大切なのは、自分のことを自分で受け入れることだと思う。

周りの優しさに甘えて、すくすく生きていたけれど、大阪で出会ったゲイの人たちのことを、最初別世界の人間のように感じた。充分生きたいように生きていたくせに、生きたいように生きていて羨ましいとかふざけたことを思った。

自分が、ゲイであることが、どこかかわいそうくらいに思っていたのだ。

そんなことはなかったんだ。

たくさんたくさん思い悩んだけど、それはみんな同じ。
異性を好きでも、同棲を好きでも、悩むことなんて、ほとんど同じ。
どこか自分で勝手に大袈裟にして、自分のことなのに、自分自身のこととは受け入れずに、自分を認めてあげていなかったと思った。

そう思えたのは、大阪で出会った人たちのおかげだと思う。

人に認めてもらうことより、自分を自分で認めてあげること。
高校生の頃の自分に言ってあげたい。
そのままでいいし、そのままでいいと思える人たちに出会えるよって。

僕はマジョリティではない。
でも、それはみんな同じ。
みんなそれぞれマイノリティだ。

お菓子が好き。お茶が好き。おにぎりが好き。本屋さんが好き。そして、男が好き。

その程度のことだ。
個性なのか、特徴なのか。
その程度のことだ。
普通じゃないし、普通だ。

遅れてやってきた思春期に、未だに悩まされているような時もあるけど、一生思春期でもいいやと思っている。
僕は僕だし、君は君だ。


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