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「レッド・ゾーン」の復活祭

 復活祭の連休を家で過ごしている。

 イタリア語でPasqua(パスクワ)、「復活祭(イースター)」はキリストが十字架にかけられたあと3日後に復活したことを祝うキリスト教の祝日で、キリストの生誕を祝うクリスマスと同様かまたはそれ以上に重要な日とされている。日本では信者でもない限りなじみづらいのは、この復活の日は、「3月21日の春分の日を過ぎて初めての満月の後の日曜日」と、つまり3月22日から4月25日の間で、その年により日付が変わるため。かつ、おそらく年度末、年度始めに当たる日本では他に何かと行事が多くて忙しいのも理由のひとつかもしれない。

 昨年2020年のパスクワは4月12日、(私は日本にいたのでフツーに過ごしていたが)イタリアはウィルス感染が爆発的に拡大し、戒厳令並みのロックダウンのさなかだった。パスクワといえば、クリスマス同様に家族親戚一同集まっての大ご馳走、あるいはちょうど気候がよくなる頃の連休とあって小旅行に出かけるのが定番のイタリアにおいて、厳しい外出禁止令はこたえたと思う。だがそれだけ深刻な事態であることを皆が理解し、ひたすら自宅でしのいでいた。夏までには、クリスマスまでにはそれまでのような日常生活が取り戻せると信じて。

 夏の間につかの間の、息継ぎのようなちょっぴりの自由を味わった後、クリスマスから年末年始も外出禁止。そしてまさかの、まさかの2回目のパスクワを外出禁止のまま迎えることとなった。
 カレンダー上の祝日にあたる今日5日(月)までの3連休は、全国一律「レッド・ゾーン」、原則外出禁止で外出の際は身分証明書とともに決まったフォーマットの「自己証明書」が必要となる。ただし今年は、親戚や友人の家を2人以内、1日1回以内で訪ねることはOK、また教会でのミサへの参加もOKとなった。何れにしても、市や州をまたいでの移動は禁止。

 テレビのニュースの街頭インタビューでは皆、「家で家族で過ごしますよ」と言っている。そりゃそうだろう、だってそれしかないのだから。そして、飲食店の経営が厳しいのは日本と同様だが、「パネットーネ」に似た復活祭定番のお菓子「コロンバ」や、卵型チョコレートなど、スーパーの市販品だけでなく、有名菓子店の自家製など高級品の売り上げは好調という。高級レストランもデリバリーやテイクアウトを用意するなど工夫している。

 今回数年ぶりにローマに来て驚いたのは、フードデリバリー・サービスが普及していたこと。自転車や、これまたいつの間にか大普及していたシェアリング電動キックスケーターに乗って、色とりどりの大型の箱型バッグを担いだ配達員が、ローマ市内を走り回っている。できるだけ外出は避けたい、だが、できあがったものをすぐに食べたいという要求を満たすサービスは、この環境で需要が急速に伸びたのは理解できる。これはきっと今後もなくならないだろう。ただし労働条件に問題が多いとして、法整備などが急がれている。同じく急激に業務が増えて労働環境が悪化したアマゾン・イタリアでも従業員によるストライキがあったばかりだ。

 同時に、家族で過ごすことができない人、家にいられない、いるのが苦痛な人、そして食べられない人はどうしているのだろう、と思う。残念ながらこの1年で、イタリアでもDVが増えていると聞く。(限定的ながらも)祝祭ムードのニュースやCMの合間に、たまにホットラインの公告が入る。

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 私自身は、スーパーで買い込んだ食材を少しずつ調理し、むしろ食べ過ぎに注意しつつのんびり過ごしている。写真を整理したり、ちょっと(許可されている)散歩に出たり。ちょうど藤の花が満開で、にわかご近所フジハンターになっている。読書もするはずだったのに、3連休ももはやあと少しだけ・・・。本については、ちょっとまたのちほど。

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#ローマ #ローマ暮らし #エッセイ #ロックダウン #レッドゾーン #パスクワ #復活祭 #イースター  
Fumie M. 04.05.2021

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