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アンツィオの休日

 長い長い、とてつもなく暑い夏が突然終わりを告げ、暖かいものが心地よい季節になった。雨の日も、何カ月もの間何も降らなかった日々を思えば、ほっとするようでもある。それでも、お休みの日に降るとがっかりしてしまうのは我ながら身勝手だと思う。

 夏の終わりに、アンツィオ(Anzio)へ出かけた。

 アンツィオはローマから50kmほど南にある海岸ぞいの町で、ローマの人々にとっては、週末にのんびりとシーフードを食べに行くところ、というイメージらしい。実は、第二次大戦中の1944年1月22日に連合軍が上陸した港であり、まさに「アンツィオの戦い」といえばイタリアの歴史には必ず登場する重要な地名でもある。
 ローマの郊外は、交通の便が悪いところが多いのだが、アンツィオは電車で行ける。今から思うと、ほんとに夏の最後の日となった週末、アンツィオに向かう電車は既に、ビーチを目指すのであろう、外国人観光客や、まだ車を運転することのできない若い子たちで賑わっていた。

 ここのビーチのなんと言っても驚くのは、ビーチ目前に迫り来るローマ遺跡。なんと皇帝ネロの別荘だったところが、およそ2000年の間、波に洗われ、雨風に晒されてなお、その片鱗を覗かせている。巨大な遺跡群を前に、中にはビキニのまま携帯を向けて写真を撮っている人もあるけれど、ほとんどのビーチ客は、取り立てて関心を持つふうもなく、各々が甲羅干しや海水浴、そしてビーチでのサッカー遊びに興じている。

 いやたぶん、こんな絶好の海日和の週末に、ペラペラの薄着とはいえ一応、服を着こんで、帽子にサングラスの重装備で、わーわー言いながらやたら写真を撮っている日本人の方が、ここではよほど異質な存在だろう。

 駅から海に向かう途中に博物館がある。このあたりで発掘されたローマ時代の遺跡の数々が展示されていて、皇帝だけではない、貴族らの別荘が立ち並ぶリゾート地だったことが伺いしれる。最もそのほとんどは、掘り出され、その場から剥がされ、ローマや他の美術館に持っていかれてしまった、という。それでも、立派な床モザイクに鮮やかな彩色の壁、彫刻や「ニンフェオ」と呼ばれる中庭噴水など、ローマ時代の邸宅建築の美をかいまみることができる。

 そして同じ建物の一角には、「アンツィオの戦い」の資料などを展示した戦争博物館も置かれている。自分の祖父が、親戚が・・・とわざわざ訪ねてくる人もあるらしい。

 もちろんアンツィオに行ったからには、おいしいシーフードもガッツリ、たっぷりいただきましたよ。また秋から冬にかけてのお天気のいい日に、またお散歩がてらおいしいものを食べに行きたいと思っている。

#ローマ #ローマ近郊 #ローマ遺跡 #ローマの海 #シーフードランチ #遺跡めぐり #モザイクの旅 #週末の旅 #イタリア

8 ott 2022

 


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