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ローマの春、2021


 春は黄色い花から。そんな言葉がなかっただろうか。梅や桃、桜は違うけれど、一斉に開いたレンギョウや菜の花は確かに、より春の暖かい日差しが似合うし、春を感じさせられる気がする。
 イタリアなら何と言ってもミモザだろうか。小さな黄色いボンボンのような花をたくさんつけたミモザの花の咲くころ、3月8日の国際女性デイには女性にミモザを贈る習慣があることもあって、黄色(イエロー)は何か新しい季節の到来を告げるような、自然と緊張がほぐれて笑顔が溢れるような、そんな効果があるように思う。

 2月に到着したとき、ここローマは「イエロー」だった。イタリアは昨年11月より、ウィルスの感染拡大状況と域内の医療逼迫具合を見て、政府が州ごとに「色分け」をしており、その色により行動制限が細かく決められている。完全ロックダウンに近い赤、オレンジ、イエロー、そして白。ローマ市のあるラツィオ州は下から2番目の「イエロー」になっていた。

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 「イエロー」は実際、日本の「緊急事態宣言」に近い。ソーシャル・ディスタンスやマスク着用、店舗や建物に入る際の手指消毒の徹底は全て前提として、飲食店は18時まで営業可、条件を確保できれば店内飲食もOK。学校や一般店舗は通常通り開いていたし、ちょうどポカポカ陽気になり始めたこともあり、そぞろ歩きをする人も多く、週末などはむしろその人出が問題になったり。日本より厳しかったのは、美術館や展覧会は「イエロー」でも土日は原則閉館なことで、それならば、と教会を見学に行くといつもより多くの人を見かけたりした。

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 ああ、意外と賑わっている、とホッとしたのも実は、私が日々接しているのが、比較的地元の住民の生活圏であるからなのだった。これまで観光客でいっぱいだったエリアに足を踏み入れると、その密度の低さに違和感を感じ、ましてや周り中の土産店やレストランが軒並みシャッターを下ろしているのはやはり悲しいとも寂しいとも、なんとも言い難い気持ちになった。

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 それでも、「イエロー」は幸せの色だったことを知る。
 3月12日(金)、イタリア政府は国内で特に、イギリス変異種の感染が急激に増えていることなどを理由に、ほぼ全国を「レッド」に指定すると発表した。実行は15日(月)から。そういうこともあるだろうとは思ってはいたが、まさかの事態に慌てた。というのも、まさに15日に仮住まいから引っ越す予定にしていたから。
 入るのは家具付きアパートで、基本的なものは、食器や調理道具類、家電含め揃っている。とはいえ、身の回りのもので引っ越してから買い求めようと思っていたものもある。調べるとどうやら、引っ越し後の者にとってもっとも必要となるキッチン周り、バスルーム周りの小物およびは「第一必需品」のカテゴリーから外れ、関連店舗も休業になるらしい。慌てて、ともかくシーツ一式と最低限のタオルを購入し(引っ越し前日に荷物を増やし)た。

 そして今週、ローマは(オレンジを飛び越え一気に)レッド・ゾーンへ。食料品についてはスーパーが変わらずに開いていて問題なし。一方で、先日までランチならできたお店も、休業またはテイクアウトのみ。通りを歩く人はそれほど減っていないようにも思う。外出は必要最低限に限られ、住所や行き先、理由を記した「自己証明書」を持ち歩いていなければいけないはずなのだが、皆、持っているのだろうか・・・。そういう自分も、こうして仕事以外にもウロウロしているわけなのだが・・・。
 シーツ、タオル類は見事に買えない。よかった、買っておいて・・・。専門店は休業、複合店でもインテリア、キッチン部門は閉鎖されている。不思議なのは、薬局は当然として、高級化粧品店は通常通り開いていること。ちなみに、衣類、靴、バッグ等は全てNG。子供服と子供の靴は例外で下着は大人用もOK。パジャマは○でTシャツは×。
 本屋さんが開いているのは救いと言えるのか(でも探している本は見つからない)。なお、劇場、映画館はイタリア全国で1年前から閉まったままで、当初は今月末あたりから再開の見込みだったが延期は免れないだろう。

 レッド指定は今のところ月末までだが、4月最初の週末はイースターの連休で、すでにあらかじめレッドと決められている。不便な生活はもうしばらく続きそうだ。

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#ローマ #ローマ暮らし #エッセイ #ロックダウン #レッドゾーン #イエローゾーン

Fumie M. 03.19.2021

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