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元発電所博物館の貴重なローマ時代のモザイク

 以前こちらで紹介した、元発電所を使った博物館チェントラーレ・モンテマルティーニには、大理石の彫刻たちだけでなく、同じローマ時代の床モザイクも展示されている。

 2階の奥、工場時代のボイラー室(Sala Caldaie)に入ると、大きなモザイクが2つ、手前にある四季の寓意や「プロセルピナの略奪」という神話の場面が描かれた2世紀のものもすばらしいのが、驚きは奥の、より大きいほう。横幅15メートル、縦9メートル、とはいえ全体が三角形に近い台形の形をしているので面積で言うとその3分の2くらいだが、部屋の中央を広く占めている。

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 全体に、横長方向に上下半分に向きが分かれており、その両側に狩の場面が描かれている。
部屋の入り口側から、一番近いところにいるイノシシは、よく見るとその脇腹に長い矢が刺さり、血が飛び散っている。左手に目を移すと、イノシシに対峙する犬のすぐ後ろで馬上の男性が大きく右腕を掲げており、どうやら彼の放った矢が命中したようだ。

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 残酷な場面だが、ローマ時代のモザイクにおいて、狩りや、獰猛な動物同士の争いの場面は珍しくない。それ自体の可否はさておき、イノシシ、犬、馬、男性のそれぞれの描写の細やかさ、表情のリアルさに驚く。
 さらに左に目をすすめると、同じく狩りの場面なのだが、こちらでは、野生動物らが網の中に追い立ててられているようだ。その先には、罠と思わしき小屋があり、その上に構える男性は、擬似餌で野生動物を誘い込みつつ、罠にかかった途端に、扉を落として生け捕りにしようという作戦らしい。

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 反対側にも、男性が、猟犬を使って動物を追う姿が描かれている。

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 狩猟の場面が、この時代にモチーフとして使われていたことを示すのに、似たような場面がレリーフになっている石棺も展示されている。

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 モザイクに戻ると、これは20世紀の初めに、皇帝や重要人物の邸宅のあったリキニウス庭園で発見されたもので、元々は紀元後4世紀初めに豪華な邸宅のポルティコ(中庭)の床を飾っていたものと推察される。パラッツォ・マッシモ博物館をはじめ、ヴァチカン美術館、あるいはテルメ・ディ・ディオクレツィアーノ博物館など、ローマ市内にはいくつも、立派なモザイクを保存・収蔵する博物館や遺跡があるし、狩をテーマにしたものもたくさんあるのだが、この迫力、この色合い、力強いタッチに、この動物や人の大きさのものはほとんど見たことがない。強いていえば、シチリアのピアッツァ・アルメリーナの皇帝屋敷のモザイクに似ている。

 先日もイギリスで、イーリアスの場面を描いた大変珍しいローマ時代の床モザイクが見つかったと話題になったが、イタリアの内外で今でも、こうして新たな発見があったり、また、発掘調査が進んだりして次々と新しい材料が出てくるのがおもしろい。次はどこのモザイクを見に行こうか・・・。

Centrale Montemartini
http://www.centralemontemartini.org
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08 dic 2021

 


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