夏の終わりに
オリーヴと雑木林の緑と、もうひとつカラブリアで目を奪われたのは、どこまでも青い海の色だった。「イタリアの最も美しい村」にも選ばれているトロペアは、つま先のちょっと手前、足の甲の真ん中にぽこっとでっぱった部分、ほんとの足なら靴に当たって痛くて痛くてつらいところだと思うが、海に突き出た崖の上にあるちっちゃな町ではそのために、目の前に遮るものが何もない、船のへさきのような景観が広がっているのだった。
えぐられて、上の建物が迫り出すようになった海岸沿いにはギリギリ車道が通り、さらにその海側には猫の額かというほど細い、だが長く伸びるビーチにはずらりと、カラフルな(有料の)ビーチパラソルが並び、さらにそのパラソルの隙間にはびっしりと、思い思いのパラソルやビーチマットでくつろぐ人々でいっぱい。
いや、正確には、そのでっぱりの先にはちょうど足にできるタコのような、元々は島であったであろうちっちゃな小山があって、てっぺんに建つ教会がお城のようでもあり、何か攻略ゲームの風景のようにさえ見える。
もちろん期待もいっぱいだったけれど、ある意味期待以上だった嬉しいサプライズは、海の家のランチ。ビーチ上に建てられた、ローケーション第一で選んだ食堂は、テラスの特等席をキープしてからよくよく見てみれば、シンプルながら広くて本格的なキッチンがあって、おばちゃん(失礼)2人がガンガン料理している。白身魚をベースにしたパスタがとってもおいしくて、翌日もリピートしてしまったことを白状しておこう。
石造りの街もかわいくてすてきなのだけど、この街の魅力はなんといっても海。
昼間は嘘のような、まさにアクアマリン色の海は、夕陽を浴びてオレンジ色に染まり、やがて深いサファイア色へ。遠くにはストロンボリ島が浮かぶ。美しい海は何度見ても、いつまで見ていても飽きないのだった。