見出し画像

映画館に行こう!〜「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」


 とある海辺の映画館、閉館を前に一夜限りのオールナイト上映のはじまり、はじまり〜・・・。
暑い夏の、嵐の夜のその日のテーマは、「日本の戦争映画大特集」だった。

 映画好きの毬男、ジャーナリスト鳳介、そしてチンピラの茂は、観客であったはずがいつの間にか、映画の中の世界にほんとうに引き込まれていく。
 ところで日本の戦争映画というと、第二次世界大戦を扱ったものをイメージするけれど、お侍さん同士の争いだって戊辰戦争だって全部、戦争であることには違いない。大河ドラマや時代劇のおかげで、何やら明治(含む)以前の事実は、お話の中だけの物語のように錯覚しているけれど、それは全て、人と人との殺し合い以外の何物でもなかったのだった。
 3人は、そんな歴史の中の、そこに生きる人々、特に市政の人々の間にぽ〜んっと放り込まれる。運命を受け入れ、運命と闘い生きる人々が死に向かっていくのを、あがいても止めることができない。
 「戦争」を、3人の目を通して客観的にみる。戦争とはなんと悲惨で、ばかばかしいものなのだろう?しかも、まっただ中にいる人には、それが見えない。
では、ただ辛いだけの戦争映画かというとそれは違う。そこは大林宣彦さんという映画監督により、戦争の中がシリアスになればなるほど、視点はシニカルに、そしてしばしば笑いにすらなる。あくまでも、死者に対するへの無念と敬意を忘れずに。
 いつもどこかへなちょこで腰抜けの3人、彼らといろいろな時代に出会う女性たちは、カッコよく美しく頼もしい。そしてなにより、このメインキャスト以外にありとあらゆる年代やジャンルの俳優さんが登場しているのはまさにキネマの玉手箱!本当にちょい役までびっくりするような人が出ていたりして、さあ、あなたは何人言い当てられますか?と挑戦を受けているようで、これは何度見ても次々に新しい発見がありそう。
 余談だが、茂役の細田善彦さん、数年前にあるお仕事でお目にかかったことがあるのだが、よく食べ、よく飲むステキな青年だった。今回の見事なチンピラ色男っぷり、一段と楽しませていただいた。

 当初の、公開予定日だった今年4月10日に、この世を去った大林監督、最後まで、そしてたくさんのステキな映画をありがとうございました!

画像1

海辺の映画館ーキネマの玉手箱
2020年、179分
https://umibenoeigakan.jp

#海辺の映画館 #大林宣彦 #エッセイ #映画  

Fumie M. 09.02.2020

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?