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ヴェネツィア映画祭2020は「リアル」で、9月2日から12日開催


 7月28日、今年のヴェネツィア映画祭での上映作品が発表された。「金獅子賞」を競うメインのコンペに18作品、新進作家や実験的な作品を主に取り上げるオリゾンティ部門に19、オリゾンティ短編に14作品。他に、コンペ外でフィクション8作品、ノンフィクション11、特別上映3作品、映画を学ぶ学生らのワークショップにあたるカレッジから2作品。
 これらは例年通り、ヴェネツィアのリド島の映画祭会場を中心に上映される。

 日本からは、コンペ部門に、黒沢清監督の「スパイの妻」(115分、10月16日公開予定、http://wos.bitters.co.jp)が選出された。黒沢監督はこれまでに、「叫」(2006年)、「贖罪」(2012年)でヴェネツィア映画祭に招待されているが、コンペ選出は初めて。
 また、短編部門に、伊東ケイスケ監督の「Beat」(12分)のほか、日本、ドイツ、インドネシアの共同制作として、Jonathan Hagard監督の「Penggantian」という作品(12分)が選出されている。
 
 国際映画祭として最古を誇るこの映画祭は今年で第77回目を迎える。
世界中を襲ったパンデミックの影響で、各地大小の映画祭が、中止、延期、あるいはオンラインでの開催が余儀無くされる中、ヴェネツィアは「ポスト・コロナ」、現実には「ウィズ・コロナ」における初の、国際的かつ「リアル」な映画祭に臨むことになる。

 参加者や観衆の健康第一に、会場内の衛生管理は、国のガイドラインに全て則って行われ、会場内の座席は、人と人との距離を保つため、2席ずつ開けての指定席となること、また行列を防ぐためチケットは全てオンライン発行となる、などが予定されている。
 また、市内の2カ所に、1つは同じリド島内に、もう1カ所はヴェネツィア本島内のビエンナーレ・ジャルディーニ会場に、屋外型の劇場を用意する。
 なお、このジャルディーニ会場では既に、週末を中心に「クラシック」部門の上映が行われている。これは、近年、デジタルリマスターの進んで過去の名作を紹介するセクションとして、ヴェネツィア映画祭内で毎年行われていたが、この部門だけは今回は、期間中の全体の上映本数を減らす必要性を鑑みて、8月25日から31日に、ボローニャで予定されている映画祭で全面的に上映されることになっている。

 一方で、今年で第4回になる、VR(ヴァーチャル・リアリティ)部門では、コンペに31作品、コンペ外の「ベスト」作品9本、さらにカレッジVRの4本が選出されたが、これらは全てオンラインでの開催となる。余談だが、これまで会場になっていた、ラッザレット・ヴェッキオ島は、かつてヴェネツィア共和国時代の1423年、世界で初めてと言われるペスト患者の隔離治療施設を設立した場所で、今年、ウィルス対策について語らられる中でしばしば注目の的となっている。

 作品発表の記者会見で、映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラ氏は、まず、「ポスト・コロナ初の「リアル」映画祭となることに喜びを感じるかとしばしば質問されるが、それは違う。本当なら他の全ての映画祭が通常通り開催できることを願っていた」と述べた上で、このヴェネツィア映画祭が、あらゆる困難を乗り越えた上で、「縮小化を最低限に抑えつつ、実現できることを嬉しく思う」と喜びを表現した。
 特に、この半年以上の間、人々の生活や移動に大きな制限がかかる中、当然映画の制作にも支障が生じ、いくつかの作品については、来年を待つことになるものの、第77回を迎えるこのヴェネツィア映画祭のセレクションは結果として、いつもと遜色のない、国際的かつ質の高いものになったという。

 選出作品の制作国は、50カ国を超えた。
 また、女性監督作品は、全体の28.1%、まだまだ十分とは言えなまでも、前年比3.1%と増加傾向にあること、特に、コンペ部門は18作品のうち8作品におよび、これは性別を考慮しての選出ではなく、あくまでも作品の力によるものであることを強調した。

 近年の作品は全て、ここヴェネツィアで発表しているというイスラエルの巨匠アモス・ギタイ監督による、1つの場所、2つの民族、2つの宗教、2つの国を生きる人々を描いた作品、ローマ郊外の「普通の人々」の生活を丹念に追ったドキュメンタリーで2013年に金獅子賞を得ているジャンフランコ・ロージ監督がシリアで撮った作品、惜しくも銀獅子賞を2年連続で獲得しているアンドレイ・コンチャロフスキー監督に、映画祭ディレクターバルベーラ氏が太鼓判をおす、個性的で力強い女性監督たち。まず、映像芸術としての映画の魅力とともに、現代性や社会性、何よりも知らない世界へと目を開かせてくれるその力に、こうしてラインナップをみるだけで心が踊る。

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 現地参加が可能な監督や俳優については、例年通り現地入りすることになっている。同時に、現地に足を運べない監督や俳優については、オンラインでの記者会見等が予定されている。レッドカーペットへの登場は?公式上映はどうなるのだろう?まだまだ不明な点も多いが、夏のヴェネツィアの、太陽と海風の香りたっぷりのリド島をベースに、さまざまな技術や工夫を凝らして、
何らかの、そして最善の策を見つけてくれることを願っている。

 メイン・コンペ部門の審査委員長は、ケイト・ブランシェット、まさかさすがにオンライン参加ではないだろうけれど・・・。また、VR部門の審査員の一人に、ゲームデザイナーの小島秀夫氏が選ばれているが、こちらは部門ごとオンラインとのことなので、審査もオンラインで行われるのだろうか・・・?

https://www.labiennale.org/it/cinema/2020/selezione-ufficiale

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Fumie M. 08.02.2020

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