見出し画像

ホワイト企業を辞めた時の話

私は2年半ほど前に、世間ではホワイト企業と呼ばれている会社を辞め、現在は小説などを書いてのんびりと暮らしております。
小説でお金はほとんど稼げていないので事実上の無職ですが、貯金を切り崩しながら細々と生きている感じですね。行政からの低所得者向けの支援がありがたい。
今回はそのホワイト企業を辞めた時の話を書いてみようかと思います。

入社してから退職するまでの流れ

私が働いていた会社は頻繁に異動が起きるのですが、私は入社以来、常に「研究開発がやりたい」と言い続けていたこともあり、念願叶って5年目に研究所勤務となりました。
物凄く忙しかったですが、異動してからしばらくは特に問題にはなりませんでした。
というのも、開発する装置やその機能ごとにチーム単位で仕事をするため、誰かがミスしたりヘマをやらかしても他の誰かがカバー出来るからです。
むしろ誰かが倒れても問題ないような体制になっていたというべきかもしれません。

そんなある時のことでした。
人事異動により新しい部長が着任して新しい体制になったのですが、着任後しばらくしてから以前とは全く異なる体制へと変化しました。
本来は最低でも4〜5人以上で行う新装置の開発という重い業務を私一人で行うことになったのです。
その部長が言うには「既存装置の改造だから一人でも大丈夫でしょ」とのことでした。しかし、使用する技術が同じだけで機能は全く別だと言うのは部長も分かっているはずでした。
「既存装置の改造」と言うのは、そういう体で各種会議を通すことで非常に厄介な政治的な問題を回避するための方便だったはずなのです。
流石に一人では無理だと訴えましたが結局最後まで人員が増えることはなく、結果として約1年後に私は中度の鬱症状と診断されて休職することになったのです。
その頃の私のデスクにはタスクが書かれた付箋紙が大量に貼られており、デュアルディスプレイの片面はその付箋紙で埋め尽くされていました。今考えると異常な光景だったはずです。

復職後も数年間はその会社で働きましたが、しばらくして人事異動によりそれまでの知識や経験が役に立たない職場へと転勤となりました。
そうなると私は完全にただのお荷物と化してしまい、自分がこの会社で働く意味を見出せなくなり最終的に退職することになりました。
これが退職までのざっくりとした流れとなります。

結局は何が悪かったのか

何が悪かったかは私にも分かりません。
というよりも、明確にこれが悪いと言えるものはなかったのだと思います。
おそらくは私の仕事の進め方や組織の体制など、良くなかった部分がいくつも積み重なってしまったのでしょう。
とはいえ、私はこれだけは忘れない、ということが一つだけあります。
私がボロボロになっていた時に、職場でメンタルヘルスチェックが行われました。
私個人の結果は当然ながら悲惨なものだったため、しばらくしてから産業医さんに呼び出されるほどでした。
しかし、部内全体で見た時の結果は良かったらしく、「うちの部の平均は他の部と比べても一番良かったぞ」と部長が誇らしげにミーティングで言った時のことは今でも忘れません。
あの部長は仕事において人を数字としか見ていなかったのかもしれません。そのことにそれまで気づかなかったことが自分の最大の失敗だったと言えます。

よく言われることですが、「ホワイト企業なら残業もそんなにないはずでしょ?」というのはその通りです。
しかし、「普通の人が深夜まで残業して終わらせるような量の仕事を定時までに終わらせないといけない」というだけです。
もしも終わらなければ明日の自分がその負債を支払うだけです。
法律で定められた範囲でしか残業は出来ませんし、家に仕事を持って帰ることも出来ません。
過剰な残業を課されるのとどちらがマシなのかは私にもよく分かりません。

この経験で学んだこと

「私の代わりはいないけど、私の上位互換はそこら中にいる」
この一言に尽きます。
実際、私の開発していた装置はその後に後輩が引き継ぎ、無事にリリース出来たようです。
悪く言えば「私には価値がない」となってしまいますが、逆に言えば「私一人がいなくても会社は何も問題なく回る」ということです。
それなのに責任感ばかりを感じて自分が潰れてしまうのは駄目ですね。さっさと有給休暇を取って逃げるべきでした。
上位互換がいるなら上位互換に任せて自分は楽をすればいいのです(こんなことを書くと怒られそうだ)。

あと、人柄と能力は全くの別だと言うことも忘れてはいけません。
私が心を病んだ時の部長の人柄は一見すると良い人にしか見えないのです。おそらくは仕事以外の場で出会っていたならお互い幸せだったことでしょう。
ただ、部長という管理職としての能力という点ではお世辞にも優れていたとは言えません。

会社がホワイトだろうと何だろうと、結局は上司や同僚次第ということです。
それ以外にも様々な要因で心は簡単に病みます。
「自分は甘えてるんだ」とか思わず、辛い時はさっさと休みましょう。
自分が異常な状況に置かれていることに当の本人は案外気が付かないものです。

会社を辞めても大丈夫なのか

ブラック企業だと辞めるだけでも大変なようですが、私の場合は何も問題ありませんでした。
辞める時も「やりたいことがあるので辞めます」と半分以上は嘘の理由を言って辞めましたので、引き止められることもありませんでした。
本当のことを言って引き止められると面倒臭いので、辞める時に嘘を言う人は多いんじゃないかと思います。

そして辞めたあとですが、結局は世の中金です。
私は贅沢な生活というものには全く興味がないので、貯金だけはしてあったので助かったという感じです。
とはいえ、ハロワで転職活動をすれば失業保険ももらえますので、貯金が無かったとしてもなんだかんだしばらくは生きていけるはずです。
命を断つことを考えるほど病んでいる場合は、さっさと会社なんて辞めましょう。そこまで考えられなくなるのが鬱病の厄介なところなんですけどね……

最後に

私が会社を辞めた時の話をかなりあっさりめに書いてみました。
実際は約10年近くも鬱病に悩まされることになったので、重く書こうと思えばいくらでも重く書けます。
とは言えそんな文章を読みたい人など誰もいないと思いますので軽めに書いてみました。
あっさりしすぎかもしれませんが、いずれ詳細なことをどこかで書くことがあるかもしれません。

もしもこれを読んでいる方の中で仕事が辛いと思っている方がいらっしゃいましたら、さっさと休みましょう。
人に迷惑をかけるとかはっきり言ってどうでもいいので、自分のことを最優先に考えてください。
私はいまだに駅のホームで前の方に立つことを避けます。電車に飛び込むことを考えていたあの時のことを思い出すからです。
皆さんが心健やかに暮らせるよう心から願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?