「ギュンター・グラス 「渦中」の文学者」 依岡隆児
集英社新書 集英社
依岡氏には「ギュンター・グラスの世界」(鳥影社)もある。
第三章まで読んだ。グラスはデーブーリンを師と仰ぎ、カミュや小田実の思想とも親しい。一方、グラスに影響を受けた作家としてアーヴィング(「猫と鼠」を自作に取り入れた)やサルマン・ラシュディらがいる。この間読んだヒュレもその一人だろう。
ナチス親衛隊に17、8歳で召集、ソ連軍に敗れてマリエンバードで捕虜となり、強制収容所のことを知り愕然とする。
それ以降は、具体性に重きを置き、白黒つけるのを避け「灰色」に留まる努力をし、政治・社会活動や批判も積極的に行う。社会民主党を支持。芸術的には、詩と彫刻(石工)から始まり、ジャズ(サッチモと共演した?)や絵、映画さまざまな活動を行ったり、コラボしたりする。
(2022 03/20)
「女ねずみ」から、「私」とクリスマス祝いにもらった雌のねずみとの対話。「私」はねずみのたてる雑音で気が散ってしまう。それが多様な読みを産むきっかけとなる。
「鈴蛙の呼び声」から。ちなみにグラスがドイツ統一に反対(というか留保)したのは、統一ではなく西側からの東側吸収という形に対してであって、統一の際の新しい憲法を作らずなし崩し的な統一に反対した。グラス自身も蛙を飲み込む思いもしたのだろうか。
「玉ねぎの皮をむきながら」。これまたちなみに、グラスは料理も得意で、苦い内臓料理などを客に出す、という。ライヒ=ラニツキはこの料理が苦手だったからグラスを批判した?
また、イスラエルのイラン先制攻撃(2012)に対して、グラスはイスラエルを非難した。ただ、1960年代には、ドイツの作家としてイスラエルに招待された、という実績もある。
「女ねずみ」以来、グラス読んでないなあ…この本は読み終わり。
(2022 03/21)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?