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「パリ歴史探偵術」 宮下志朗

講談社現代新書  講談社


パリ歴史探偵術

昨日買った「パリ歴史探偵術」。現在パリに残っている様々な痕跡から、歴史的景観を復元しようとする試み。
副筋が2つ。まずは著者宮下氏の経験をそこに織り込んでいこうというもの。それと、この本が出た年に没後百年だったエミール・ゾラを一つの軸にしよう、ということ。
パリの拡大は中世12世紀の城壁から、15世紀のセーヌ右岸の拡大、18世紀の徴税請負人の壁、19世紀のオスマンの都市計画…と続き、現在に至る…

庶民的飲み屋(まさに「居酒屋」の世界)、プルーストの中に出てくる公衆トイレ、それから印象派の島散策。
プルーストではシャルリスの姿が足が見えるので女中にばれていたという話と、シャンゼリゼで少年時代の語り手が入り、そして祖母の最初の発作を起こす公衆トイレ。公衆トイレの中でも語り手は嗅覚によって何事かを思い出す。
印象派では、モーパッサンの短篇でも出てくる貸しボート兼居酒屋の闇の部分。売春や同性愛が公然とそこでは行われていた。そういう場所を印象派の光の中にモネもルノアールも捉えていた。「そういうことを日本で展覧会を見に来ている女性達は知っているのであろうか?」と、宮下氏。すいません、自分も知らなかった。
その他、バスティーユから出ていた鉄道の廃線跡歩きもしている。

東京では、西洋と違ってあんまり古いものは残っていない気がするが、思いがけないところにあったりするので要注意…
(2010 10/21)

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