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黒と白と、ときどき朱(あか)~プロローグ~

 目の前には、白い箱が置かれていた。そして、その周りには親戚と思われる人がたくさん集まっていた。なんで「と思われる」なのか…。それは、ほとんどが知らない人ばかりの中で、唯一分かる顔が一人いた。おばちゃんの甥っ子さん。いつもおばちゃんが私のお店に来るときに送り迎えしていた人だ。そして、それ以外にもおばちゃんに似た年配の女性が二人いたから。

「あなた、ふみかさん?本の子やない?」

「あ、本当や!本の子や!」

「姉さんが自慢しちょったよ。いろんな人に宣伝して回ってね。『すごいやろ!すごいやろ!?』って、嬉しそうに話して…。」

「あんたを我が子のように想っちょったちゃから」

 次々に、知らない人たちが私に言葉を浴びせる。

―――なんでみんな私のこと知ってると…?しかも、本のことまで…。どういうことよ?おばちゃんが宣伝してくれてた?自慢してた?私の本のことを??しかも、私のことを我が子のように想ってたって???

 視界が土砂降りのフロントガラスのように、何も見えなくなった。

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