アンカーを囮にしたビルドアップ(スペインに見た、ビルドアップの戦術)
2020 UEFA ネーションズリーグ 第1節
ドイツ vs スペイン
~スペインに見た、アンカーを囮にしたビルドアップ~
第2回UEFAネーションズリーグが開幕しました。グループステージ第1節の目玉はやはり、ドイツvsスペインでしょう。
その中で、スペインは中盤にブスケツ、チアゴ、ファビアン・ルイスと中央で攻撃の方向づけを行うレジスタとしての能力に長けた3人を器用し、個人的にどのようなビルドアップを行うのか注目していました。
そして、あのアンカーのブスケツを囮にするようなビルドアップを行っていたので、分析していきます。
スタメン(ドイツ)
(スペイン)
結果 : ドイツ 1 - 1 スペイン
( 前半 0 - 0、後半 1 - 1 )
スペインの攻撃
(自陣からのビルドアップ)
① 陣形
スペインは自陣からのビルドアップ時(ファーストサード)、初期位置として下図のような陣形となる。
② レジスタ
攻撃のタイミングや方向づけを司っているレジスタは、インサイドMFのチアゴ、ファビアン・ルイス。
このとき、下図のようにインサイドMFのチアゴかファビアン・ルイスのどちらか一方がアンカーのブスケツの脇に下りてボールを引き出し、もう一方はトップ下ラインの中央へ上がる。
この際、アンカーのブスケツは、下りてきたチアゴあるいはファビアン・ルイスにスペースと時間を与えるための囮としての役割が与えられているように見えた。
③ ダイレクトなビルドアップ
スペインは、相手のプレッシングの強度によって「ダイレクトなビルドアップ」と「ポゼッションによるビルドアップ」を使い分けていた。
まず、前線へロングボールを送る「ダイレクトなビルドアップ」を行う時は、ボールを引き出したインサイドMFのチアゴあるいはファビアン・ルイスからのリターンを受けたGKのデ・ヘアが、CFのロドリゴとトップ下に上がったインサイドMFのエリアをターゲットとしてロングボールを送る。
その後、CFのロドリゴあるいはトップ下に位置するインサイドMFが競ったボールを後方に落とし、アンカーの位置から飛び出してきた中盤の選手(チアゴorブスケツorファビアン)がボールを前に運ぶ。
④ ポゼッションによるビルドアップ
次に「ポゼッションによるビルドアップ」を行う時は、ボールを引き出しに下りてきたインサイドMFのチアゴあるいはファビアン・ルイスを中心に、相手のプレッシャーラインを越えようとする。
このとき、MFの3枚(ブスケツ、チアゴ、ファビアン・ルイス)が流動的に動くことで相手のマークをずらし、中央でスペースとフリーマンを作る。
また、GKをビルドアップに含めることで、下図からも分かるようにドイツのマンマークプレッシングに対して「8vs7」の数的優位でビルドアップを行うことができる。
また下図のように、状況に応じて右インサイドMFのファビアン・ルイスが右SBの位置に下り、右SBのカルバハルが高い位置を取ることで、下りたファビアン・ルイスを経由して右サイドからビルドアップを行っていた。
これにより、マンツーマンで対応するドイツに対してマークのずれを生じさせていた。
(シーン1)
個人的に良かったと思ったシーンは、下図のように左SBのガヤが高い位置に上がることによってできた、相手FWのサネの背後のスペースを左CBのパウ・トーレスが使い、相手のプレッシャーラインを超えたシーン。
正直のところ、UEFAネーションズリーグという大会はシーズン後に行われる大会であるため、各選手のコンディションが最高潮ではないと思います。
しかしながら、それぞれのクラブで戦ってきた選手たちが1つの代表のチームとして戦うときに、どのような相互作用が起こるのかという点が見ていてとても面白いと思います。
例えば、チアゴ・アルカンタラとブスケツやファビアン・ルイスとブスケツだけでなく、バレンシアでのロドリゴとフェラン・トーレスの相互作用とスペイン代表でのロドリゴとフェラン・トーレスの相互作用の違い(ロドリゴとフェラン・トーレスは元バレンシア)など、、
サッカーでは、常にその構成要素同士や周囲の環境などと相互作用を持つスポーツであるということを改めて感じました。
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