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ダブルゼロトップとは?(マンチェスターシティに見た、自陣でのビルドアップ戦術④)

19/20 UEFA チャンピオンズリーグ
ベスト16 1leg
レアル マドリード vs 
マンチェスター シティ

~マンチェスターシティに見た、「ダブルゼロトップ」という新しいビルドアップ~

 今回は、ビルドアップの戦術第4回目としてマンチェスターシティを紹介します。今回でこの試合を取り上げるのは3回目です。それだけ個人的に面白い試合でした。

 そして、ペップのシティがこのレアル戦で行っていた、2枚のFWがトップ下に位置するという「ダブルゼロトップ」のような新しい発想の戦術が非常に面白いと思ったので解説します。(ダブルゼロトップのほかに別の表現があるかもしれません。)
 ※ゼロトップとは、ペップ時代のメッシやリバプールのフィルミーノに代表されるように、4-3-3システムにおいてCFの選手を攻撃時に一列下げることにより、中盤での数的優位を確保すると同時に、空いたCFのスペースにウイングなどが大外から走りこむことによって効果的に相手DFの背後をつくことができるという戦術。

 ここで初めに、今回のスタメンはスタートの配置ではなく、シティが開始2分後に配置を変更したため、変更後の配置をスタメンとして扱います。


スタメン(home : レアル マドリード)

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(away : マンチェスター シティ)

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結果 : レアル マドリード 1 - 2 マンチェスター シティ
(前半0-0、後半1-2)


① ダイレクトなビルドアップ
 シティは自陣からのビルドアップ時、レアルがオールコートでマンマークを行うという状況下で、GKへのバックパスをスイッチに、GKのエデルソンからFWラインへのロングボールを入れるダイレクトなビルドアップを行う。
 まず、陣形は下図のように2-4-2-2となる。このときFWのデブライネとBシルバはトップ下ラインに降り、ハーフスペースに立つ。またFWラインではSHのジェズスとマフレズが大外レーンに立つ。

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 このとき、レアルはオールコートでマンマークを行うため、FWのデブライネとBシルバがトップ下ラインに下りるという、2枚のFWがゼロトップの動きをすることにより( = ダブルゼロトップ)、FWライン中央のスペースが下図のように大きく空く。
 ここで、FWラインの大外に立つSHのジェズスorマフレズが、サイドから中央の空いたスペースへ走り込み、GKのエデルソンはこのジェズスorマフレズをターゲットとしてロングボールを送る。

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② ポゼッションによるビルドアップ
 シティは、レアルのプレッシングの開始点が下がる、あるいはプレッシングの強度が落ちると、すぐさま後方からショートパスでポゼッションによるビルドアップを行う。
 このときの陣形も下図のような2-4-2-2となる。

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 このとき、下図のトップ下ラインのハーフスペース入口(黄色の枠)に立つFWのデブライネとBシルバへ、クリーンな形でボールを入れるために、相手の第1プレッシャーライン(ベンゼマ)と第2プレッシャーライン(トップ下ライン4枚)の4+1に対して、CB+SB+ボランチの6枚の2+4(+GK)でポゼッションを行い、第1・2プレッシャーラインを越える。
 また、デブライネとBシルバは状況に応じて頻繁に入れ代わる。
 このとき、ボールの方向付けを行うのはボランチのロドリとギュンドアン。

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(一例)

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 シティは開始10分ほどまでは、レアルのハイプレス(オールコートでマンマーク)により、ほとんど①のダイレクトなビルドアップを行っていましたが、10分以降は次第に②のポゼッションによるビルドアップも行えるようになっていました。
 やはり、①のダイレクトなビルドアップではなかなかチャンスを作り出すことができていませんでしたが(数本はチャンスになっていた)、②のポゼッションによるビルドアップを行えるようになると、ハーフスペース入口に立つデブライネ、Bシルバを経由することで効果的に敵陣に侵入できていました。

 この試合、シティのビルドアップ対レアルのプレッシングの局面は非常に面白かったです。
 そして同時に、グアルディオラによるレアル対策の準備とそれを実行するシティの選手たちの能力の高さには驚かされました。

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