テラダ一家の宇宙旅行 その1◆リビングから宇宙にGO!!
~ テラダ一家の宇宙旅行~
これは都心のマンションに住む、ごくふつうのサラリーマン、テラダ・マサヒトと、そのお気楽な妻のユミ、おしゃまな娘のマコ(MACCORON)、息子のケンタのお話です。
ある夜、不思議な生命体が現れ、宇宙船で旅したり。
話の途中で日本語ラップになったり、「?」となるかもしれませんが、全体としては、ごく普通のロードストーリー。
時にしんみり、だけれどニッコリ。
スピーディに太陽系、そしてココロの宇宙を旅するオハナシです。
だけれど、最近、生きづらさや、自分らしく生きることへのストレス、リア充プレッシャーを抱えている人には、ある種の便秘薬。もしくは、デトックス、読むだけエクササイズで、詰まりがスルッと流れ出るかもしれません。
いえ、そこまで深く考えずとも、お気軽に☆彡
かわいいガイドといっしょに、いざ、宇宙への旅へとでかけましょう!!
――――ここは、テラダ家のリビング。
ママがお仕事帰りに買い物をしたスーパーの袋を、どすんとテーブルの上に置いたところです。
◆ テラダ一家の日常
―――さみしくなんか、ないんです。
テラダ家では最近、家族そろってお仕事の後、今日もスーパーで、いろんなお惣菜を買ってきました。
塾から帰ってくるケンタとパパのためにお惣菜を並べましたが、高校二年生のマコのぶんはありません。
マコはこのごろ、バイトや塾など忙しく、帰りが夜おそくなることも多い青春! 真っ盛りの!! お年頃。
夕飯は? と聞いても、いらないと言われる方が多いのです。
たぶん今日もどこかで食べてくるとは思うけれど、もしマコのごはんが必要だったら、冷凍庫のありものをチンすればいいだけ。
―――さあ、これでOK。ゆっくりドラマでも見ましょう。
ママはビールと自分のごはんを用意して、お気に入りの部屋着でテレビの前のソファーにごろり。
晩酌とおつまみを相棒に、とりためたお気に入りのドラマを一気見タイムです。
塾から帰ったケンタは、ひょろりとした小学六年生。
まじめな顔立ちで、髪形もいたってフツウ。
あえて目立ちたくなんかないし、ママがおしゃれさせようとあれこれいじりたがるのを、内心、困ったなあと思っています。
ごはんを食べ終わると、白いTシャツと青いチェックのパンツに着替え、お部屋にこもって、バトル系のゲームに熱中。
リアルな友達よりも気軽に、ネットの中だけのお友達? 知り合いと、バトルに興じています。
夜おそくに帰ってきたマコは、生まれながらの目立ちたがり屋さん。
キュートで元気な、今ドキの女の子。
帰宅してすぐにシャワーを浴び、ピンクのかわいパジャマに着替えました。
自室で髪の毛を乾かしながら、さっそく今日行ったお店と食べたものをスマホからSNSにアップ。マコはMACCORON/マコロンという名前でネットアイドルをしていて、これでも、けっこう人気があるんです。
夜中、やっとパパが帰宅してきました。
パパは中年のサラリーマン。
あいきょうのある、ちょっとヒョットコに似た顔立ちで、髪の毛はかろうじて、まだ薄くはありません。ちょっとお腹がめだってきたけれど、それも貫禄がついてきたせいだと、自分に言い聞かせております。
パパも、さっとシャワーのあと、茶色のゆるい部屋着に着替えました。
テレビでスポーツ番組を見ながら夜食を食べつつ、ネットで趣味の投資の成果をチェック。昼間のお仕事中に、ちょこちょこパソコンを見てはいるけれど、トレードの分析やライバルの成果をブログで確認するのは、やはり自宅でお酒を飲みつつが一番です。
パパにごはんを出した後、ママはまた、ソファにゴロン。
大好きなドラマに戻りました。
三年前にフルタイムに復帰した職場では、パキバキとしていて明るくて、ちょっとおっちょこちょいだけれど頼れる時は頼れると言われているママですが、こうしてすっぴんで部屋着でごろごろしていると、職場とはまるで違う人みたいです。
でも、いいんです。明日はお休み。
思いっきり羽を伸ばしたい。
そんなママがハマっているのは、ありえない設定のオフィス・ラブもの。
こんな新人ありえない、即刻クビだわ、とか、こんな上司がいたらいいなー毎日たのしいだろうなー、など、心の中で突っ込みまくり。
夜中になっても、テラダ一家の電気はいっこうに消えません。
どこの部屋もあかりがついて、立ち上がっているパソコンは三台、テレビは二台。さらにそれぞれ、ときおりスマホをいじっています。
だから、いいんです。
さみしくなんか、ないんです。
ろくに家族の会話なんかなくたって。お互いの顔を見てなくたって。
ぜんぜんさみしくなんか…………
……………………
『さみしくないのが、サミシイネ』
突然、どこからか声がしました。
明るくてかわいい、コドモみたいな中性的な声。
どことなく、たどたどしいしゃべりかたです。
『どコのお部屋も明ルいけど、ここにほんとの明かりはないネ。あたたかい愛もみあたらナイ』
「ちょ、ちょっと、なんですって!? あなた、だれ?」
ママがムッとして叫びました。
「そうだそうだ。へんなことをいうヤツだな。だいたい、さみしくないのがさみしいなんて、意味がわからないぞ?」
あたりを見回しながら、パパも叫びます。
『アハハハハ…………』
おもしろそうに、姿の見えない誰かは笑いました。
『明るいのに暗クって、あたたかいのに寒ゥいオウチ。楽しいのに淋しくて、満たされてるのにカラっぽなヒト、いっぱいいるヨ。増えてるヨ。そんな中でも、ココは、とびっきり、ソレっぽイ。そうだそうだ、ココに決めタ。ここにしよウ!」
声は、どことなく、楽しそうです。
『コホン。それデハ、テラダファミリーのミナサン。聞く耳ありソでなさソで、やっぱりアリソな、絶妙なカンジで、くすんで老化した魂のミナサンを、これからとくべつな旅に招待するネ!』
そのとたん、不思議なことが起こりました。
マンションのリビングに座っていたパパ、テレビの前で寝そべっていたママ、自分の部屋にいたマコ、ケンタの身体がそれぞれ見えない力に引き寄せられて、すうっと浮き上がり、あっという間に屋根を突き抜け、大きな磁石に吸い寄せられるみたいにぐいぐい宙にのぼっていきます。
まるで、みんなが巨大な、透明のシャボン玉の中にとじこめられたみたいです。
見えないシャボン玉は、すごいスピードで上っていきます。
足元の風景がみるみるうちに遠ざかり、
「ひゃあああああ!!」
思わずみんなは悲鳴をあげました。
もうテラダ家のマンションは、はるか足の下。遠くの町まで見渡せます。
高所恐怖症ぎみのパパは「うーん」と目を回し、気を失いそうになりました。
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