その15 ◆ステップ7 火星への旅  7.Dream,Desire (夢、野望)

◆ステップ7火星への旅


 …………そして…………
 ずっと単調な景色の中を進んでいた宇宙船は、今、
 赤く燃える個性的な星の前にやってきました。
 スクリーンには、うずまく欲望のような模様が見て取れます。
 内側から、強い意志やわきあがる思いがふきだしそうなエネルギーのある星。
 火星です。

 マザーヴォイスは言います。
《さあ、自分を手放し、カラッポになった次には、満たしましょう。
 飢えに飢えた今、心からほしいもの、
 変わらずにある欲望にフォーカスするのです》
 
 ふわり、と周りの照明が暗くなりました。

☆ステップ 7.Dream,Desire (夢、野望)

画像1


《これは、魂のアンチエイジングと
 あなたの望みを現実にするために
 もっとも力強い助けとなる、ワイルドで根源的なパワーです。

 この原初の爆発的なエネルギーを
 あなた自身のものにするために
 懐疑やあきらめといった自己防衛を捨て去りましょう。
 夢を見ます。思いっきり望みます。

 自分の欲求や野望をコントロールすることは
 ふだんの生活では、必要で大切なマナーです。
 でなければ、あなたは野蛮な危険人物としてまわりから排除され
 けっきょくは、欲しいものを手に入れなくなってしまいます。

 けれど、あまりにコントロールしすぎて老成し、委縮した魂は、
 わかわかしい弾力性を失って、生きる喜びも失ってしまいます。

 たまには、思い切り自分の欲望を解放しましょう。
 その強力に最強な強欲のパワーで、
 いままでたまってきた老化の元の毒素たちを、一気に焼き尽くすのです。
 そして、フェニックスのように、魂を生まれたての姿に戻します。
 ワガママが全肯定された赤ちゃんの魂に。

「ほしいものは、かならず手に入れられるべき」
 動物的な生存本能のかたまりである赤ちゃんの頃は、全身全霊でそう信じていました。

 オッパイが欲しい→泣く→かなう。
 オムツをかえて→泣く→かなう。
 このように、自分の欲求はすべて満たされるべきと思っていました。

 この原始的で根源的な思い込みは、魂のアンチエイジングの特効薬です。゜
 のびのびと「これが欲しい!!」という自分の中の欲望を解放して、
 その気持ちよさにひたりましょう。
 望むだけ、願うだけなら、誰にだって、なんだってゆるされるのです。
 また、ほんとうにわくわくする欲望を絞り込むことで、
 あなたはより深く自分を理解し、魂とむすびつきます。
 野生の、原始のパワーをたぎらせましょう。
 その荒々しい炎を、あなたのエネルギーに変えるのです。
 
「あれが欲しい」「ぜったいに手に入れる」
 この思いこそ、生命力の根源です。
「ぜったいに高級車や別荘を手に入れる!!」
「すてきなヒトと結ばれるぞ!」
「世界一周してみせる!」
「すごいクリエイターになる!!」
 どんな望みも、最初にこう強く願い、できると信じ込まない限り、実現はしません。

 また、すばらしいことに、その「欲しいもの」や
 それを手にしている自分をイメージしたり、
 妄想したりしているだけでも、魂は若返るのです。
 行きたい場所の旅行パンフレットを眺めたり
 ほしいものを眺めたり…

 わくわくした気持ちが強く強く高まったら、
 あなたの魂はすでに、死に向かうエスカレーターから
 上に向かうエスカレーターに飛び移っています。
 
 たとえ病気になったり、けがをして入院していても
 この「欲望」があなたの中で渦巻いていると、
 治りも早いし、気力も続きます。
 この欲望は、あなたの中の小さな熱高炉なのです。

 欲望をいっぱいにたぎらせ、燃え上がらせ、
 そして、いざそれが手に入るチャンスが来たら、アウトプット。
 自分を信じて、大きくジャンプするのみです!!》
 

「おーっと、来たな」
 ゆっくりと声が消えていくとともに、明るさが戻った宇宙船の中をふわふわと漂っていたパパが元気づきました。
「パパは、こういうのは得意だぞ。ほしい高級腕時計があるし、アイドルの写真集もあるし」
「もう、パパったら。いやらしい!!」
 ママににらまれて、パパは少しもじもじしました。
「ええっと、ほかには…………できたら、早期リタイアして南の島に移住したいな、なんて、ははは」
「ああ、いいじゃん。ママといっしょに南の島に移住? 妄想や野望って、たしかにワクワクするし、魂が若返る感じがするね。私はねえ、大好きなモデルさんみたいになれたらなあ。身のこなしとか、ファッションセンスとか超あこがれる。イメトレ大事だよね。うん!」
「ボクはね、カードゲームのコンプと、あとは好きなサッカー選手のサインがほしいな。それで、高校の有名サッカー部に入って活躍してみたい! 無理だよねって思うけど、そうなれたらなって。やっぱり、できそうにもないこと、想像すると楽しいしワクワクするね!」
 いつもよりも興奮して話すケンタを眺めながら、ママはにこにこしています。
「ふふふ。ケンタは、ちょっといい子すぎるものね。もっとヤンチャくらいなほうが、ママうれしいな。ケンタがちゃんと進学してくれたら、あとは、マコがいつかいいとこ就職して、いいダンナさん見つけて、元気な赤ちゃん産んでくれたらなあって」
「ちょっとちょっと、ママ。私に振らないでよ。人への期待じゃなくて、自分の中の欲望だよ!」
 うーん、とママは考え込みます。
 みんなが見守る中、まだまだ考え込みます。
 するとピカリィがカラダをはちきれんばかりにふくらませ、あちこちにエネルギーの突起物をつきだしました。
 まるでコンペイトウか、マグマが噴きでる星のようです。
 そして、カラダじゅうから、ぶわっとエネルギーの光を噴きだします。
『ママさん。ギラギラした自分の夢や欲望がしぼんで、とても無理だからあきらめきったり、かわりに人に夢を押しつけようとするピンチのときには、…………、とりあえずの咳止めシロップ、みたいに《ココロの救急箱》モードの登場だヨ!!』
「でたー、《ココロの救急箱》。で、今度はなに?」

 火星の真っ赤なエネルギーが宇宙船のなかに流れ込んできました。
 ココロを駆り立てる情緒豊かな弦楽器の曲が始まり、ピカリィはぷくぷくとカラダをふくらませながら歌い始めます。

画像2


♪♪♪《ココロの救急箱》 7.Dream,Desire (夢、野望)

 もしも自分が王様/ 女王様だったら…………?

【なんども傷ついたり、裏切られたりすると、
 夢見るココロにつながれる重たいクサリ
 レールにしばられ、打ち付けられるクサビ、
 やる気腐り、夢見ることを自分で禁じ、いろいろ無理って信じ、
 欲望は萎え、なしくずし、なくなっていく暗示

 欲望は魂の筋肉
 つかわないとどんどん退化、すっかりココロとクサリが一体化
 いざ欲望に目覚めたくても、なまけすぎ、あきらめすぎ、
 まぶしすぎて、おもわず目をふせ見なかったふり、
 なりふりかまわず求めたりできず、
 感じてないふり、ほしくないふりのアンチ・フリーダム

 だから、ためそう、ロールプレイング
 視点を変え、ココロの壁をブレイキング
 もしも自分が自分じゃなかったら?
 自信満々のあの人だったら、
 それかキングやクィーンだったら、
 宝くじがあたったら、いったい何を望むのだろう?

 こんなとっぴな夢想や妄想でだって、魂はハッピーなチカラを取り戻す
 それは魂の準備体操、純粋な欲望をとりもどす大切なシュミレーション
 自信とりもどすためのセルフ・レボリューション
 あれこれ夢想をくりかえすうちに
 はちきれそうな欲望がたぎって、みなぎって
 自分も夢見てイイ、望んでいいんだって希望に火がともり
 気持ちよさにどっぷりとひたり
 世界はキラキラ光り、魂にどんどん注がれていく灯り
 やがて野望を手に入れるために
 あなたの存在はすこしずつ理想にちかづいていく
 無意識にじわじわと野生を取り戻していく

 だからどんどん貪欲に、ますます欲望MAX
 あなたの世界はのぞむだけ大きく激しくなれる
 がつがつした渇望は欲しいだけエネルギーをくれる
 せきららな恥ずかしい情欲だって上等
 それにより魂もわかがえり力強く上昇
 ときめき求め求められて運気だって上々
 まずは、野望エネルギー感じヤル気向上
 そのあとで本気出して現実化のための手段の誕生
 雄々しく高ぶる願望の登場

 微動せぬリビドーと渇望にカツいれて
 強力なこのエネルギーをいかし
 魂の老いの原因、がつんと溶かし
 持てるすべてのギラギラした欲望を燃やし
 感じまくれ存在のしるし
 それこそが生命のよろこびのあかし!】

 
 リズミカルにダンスをしていたピカリィが喋り終え、コンペイトウのような突起物だらけのカタチからスルスルと本来の愛らしいクリオネのような姿にもどると、みんなはぱちぱちと拍手をしました。
 そして、ママはぱちんと手をうち、顔をかがやかせました。
「そうだわ! 思い出した! 学生の頃、ママ、ピラミッドのぼりたかったのよ。けっこう真剣に行きたくて、歴史とか名所とか調べたりしてたんだけど、そのうちパパと知り合っちゃって…………」
「あ。そうだね。たしかテレビでツタンカーメンの謎とかやってると、ママいつも見てたもんね」
「なんでピラミッド? ピラミッドパワーに興味あるとか?」
「そうねえ。古代文明とかに興味あったのよ。だって素敵じゃない?」
 ママは目をぐるりと回します。
「ふうん。いいな、ママ。昔のことでも、そんな夢があったなんて」
 マコがふと、まじめな声で言いました。
「私は、そりゃあいろいろ夢はあるわよ。でもそれがほんとうの欲望なのかって言われたら、わかんない。みんなに注目されたい、キラキラしていたいっていうのはあるけど、もしほんとに大注目されちゃったら、どうしたらいいかわかんないかも。いいかげんだよね」
 しょんぼりするマコの頬を、ピカリィが美しい光でなでました。
『マコさん。まだ旅はつづくヨ。ゆっくり自分を見つめられるといいネ』
 マコはこくりとうなずきました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?