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牧島如鳩 展─神と仏の場所─

異形の宗教画家・牧島如鳩(まきしま・にょきゅう、1892-1975)の本格的な回顧展。

ハリトリス教会の伝教者であり、イコン画家として出発した牧島は、最終的に神と仏は同一であるという境地に達したといわれている。じっさい牧島の絵は油絵と水墨画を描き分け、しかも同じ画面に神と仏が共存する、文字どおり和洋混在の絵である。水墨画の筆遣いはそれほどでもないが、油絵の筆致は奇妙になまめかしく、それが本来見えないものを見えるように視覚化するアートのいかがわしさを存分に体現していたようだ。

とくに圧巻なのが、いわき市の小名浜で大漁祈願のために描いたという《魚籃観音像》。観音様が小名浜の上空に来臨するというありえない様子が大胆に描かれ、しかもこれらのシリーズは発注元である小名浜漁業協同組合が所蔵しているという事実がこの上なくおもしろい。民衆とアートと信仰が三位一体となった牧島の絵は、西洋から輸入された「芸術」を私たちの暮らしの底辺で受け入れ、土俗化しながら発酵させ、時間をかけて熟成させた、文字どおり日本のリアルな絵である。

初出:「artscape」2009年09月01日号


牧島如鳩展─神と仏の場所─
会期:2009年7月25日~8月23日
会場:三鷹市市民ギャラリー


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