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030:スタートした刑務所での生活

初日のひどい部屋から移されたB棟は、基本的には外国人用のようでした。バリをはじめ、インドネシアの他の島の人もいましたが、半数以上は外国の人という状況でした(ちなみに、初日を過ごしたK棟では、ほぼ全員がインドネシア人で、大半は英語ができませんでした)。

ブノアの警察と一緒で、日中は部屋と棟の入り口はどちらも解錠されるため、基本的に出入りは自由です。スケジュールの説明などは何もありませんでしたが、どうやら毎日のルーティーンはほぼ決まっているようでした。しばらく観察していたのですが、朝の解錠は7:00〜7:30頃に行われる点呼の後、夕方の施錠は17:30頃にされるのが一般的でした。

バリはなんでも適当。刑務所も適当

ルーティーンが決まっているとは言え、そこは何でも適当なバリの事、スケジュールがキッチリしている訳ではありません。

例えば私がB棟に移動した初日の夜。別の部屋のハミッドというイラン人から「Rp. 10,000を払えば外に出られる時間を延長できるけど、どうする?」と言われました。Rp.  10,000というと、当時のレートで約125円。それで数時間延長されるなら安いものです。その日は結局、棟の全員が看守にお金を払って時間を延長してもらいました。

18時過ぎに外に出てみると、棟の全員が部屋から出てきていて、アラック(主にココナッツを原料とする蒸留酒)のコーク割りなどを飲んでいました。私はまだ、他の人達の顔と名前が一致していなかったので少し緊張しましたが、みんなと一緒に飲みながら過ごしていると、少しだけ緊張感がほぐれました。

アラックをどこから手に入れたのかわかりませんが、とにかくここでは「お金さえ払えば何でも手に入る」のです。よく、映画に出てくる刑務所のように、看守の目を盗んで裏ルートから・・・という必要はありません。

話をしていて分かったのは、ここにいるほぼ全員がドラッグの使用で捕まったということです。でも、だからといってドラッグをやめようという意識はゼロで、中には「刑務所の中には警察はいないので、ドラッグをやっても捕まる心配がない」などという強者も。私も時々「ドラッグが欲しかったら調達してやるよ」と声を掛けられましたが、余計なトラブルはとにかく嫌なので丁重に辞退しました。

結局、その日は20時頃になって看守が「そろそろ時間だ」と言いに来るまでみんなで盛り上がりました。その後、それぞれが自分の部屋に戻り、各部屋の扉が施錠されると棟全体に静けさが戻りました。そして電気をつけようとスイッチを入れると・・・なんと、電気がつかない!なにもかもいい加減なところが、さすがバリです。

調べてみると、部屋に電気は来ているようでコンセントは使えました。照明がないと不便なので、その夜は携帯電話を充電しながら、携帯のライトを照明代わりに過ごしました。食事をし、マンディをしてから、「明日は弁護士にランプが欲しいと伝えよう」と思いながらベッドへ。前日はほとんど眠れなかったので早く眠りたかったのですが、その夜はとにかく暑くてなかなか眠れませんでした。結局、朝までの間に、暑さで何度も何度も起きてしまい、疲れているはずなのにゆっくり眠ることもできませんでした。

2日目:刑務所内を調べてみる

一夜明けて翌日。私の棟から外に出て、刑務所内をあちらこちらと回ってみることにしました。

警察と違い、ここでは一日に三回点呼があるため、その時には部屋にいなくてはなりません。ただ、それ以外の時間は外に出てもOKなので、朝の点呼が終わった後は、12時〜13時頃の間にある昼の点呼の時に部屋に戻っていれば、夕方17:30頃の点呼までは自由です。

食事は一日に二回、ブノアにいるときからお世話になっている日本食レストランに作ってもらい、午前中と夕方に弁護士事務所のスタッフによって届けられます。刑務所のオフィスに届くと、それをスタッフの誰かが持ってきてくれます。この時、少額ではあるのですが毎回チップを渡さなくてはならず、こういう小銭も毎日続くと結構負担でした。

散歩がてら、B棟を出てK棟、そしてオフィスの前を通って進んでいくと、小さなワルン(お店)がありました。そのワルンでミネラルウォーターのタンクを売っているのを発見!バリでは水道水を飲むことは出来ないので、飲料水はミネラルウォーターです。中にはボトルで買っている人もいますが、コストパフォーマンスや何度も買いに行く手間を考えるとタンクの方が圧倒的にメリットがあるため、Rp. 65,000+Rp. 5,000(チップ)の合計Rp. 70,000(約870円)で購入しました。

この日は購入したミネラルウォーターの他に、弁護士事務所から読書用のランプ、トイレの洗剤とモップ、ブラシ、お風呂で使う手桶が届き、ちょっと生活がしやすくなりました。また、何もなかった部屋の入り口にはカーテンがついて外からの視線を遮ることができるようになったため、ちょっとだけプライバシーも向上しました。

ただ、相変わらずバスルームのタンクの水漏れはそのまま。熱くて一日に何度もマンディをしないと大変なので、水が時間とともに失われていくのは結構不便です。これはできるだけ早く完全に修理する必要があります。

必要なものがいくつか揃ったことで少し気持ちが落ち着いたせいか、ここ数日の疲れが出てきました。早めに眠りたいと思いベッド(実際は床にマットレスを敷いただけ)に入ったものの、その夜は蚊の攻撃を何度も何度も受け、なかなか寝つけませんでした。マンディをしてさっぱりしても、寝てる間に熱くて汗だくになるし、さらに蚊が襲ってくると本当に眠れません。結局朝までに何度も起きてしまい、ゆっくり眠ることはできませんでした。

3日目:隣人と仲良くなった

この日の点呼は7:30でしたが、入り口の鍵はその前に開いてました。点呼と鍵は一緒だと思っていたけどそうでもないようです。もしかすると別々のタイミングなのかもしれません。

毎日の朝食は、点呼よりも前に届きます。メニューは毎回同じで、数枚の食パンとパパイヤです。私はパパイヤがちょっと苦手なので、隣の部屋のインドネシア人、アリにあげる約束をして、それは私がこの部屋を出るまでずっと続きました。

アリは日本語が勉強したいらしく、私に「日本語を教えてくれないか」と言ってきました。彼はとても温和かつ親切そうな印象で、何よりも部屋が隣なので、これからお世話になることもあるだろうと思い、その場でOKしました(実際、その後彼にはいろいろとお世話になりました)。

「ちゃんとしたテキストもないし、教える方も難しいけど、私がここにいる間に少しでも話せるようになったらいいなぁ」という思いと共に、早速、この日から日本語レッスンがスタートしました。

昨日もあまり眠れなかったため早めにベッドに入ったのですが、この日も相変わらず暑く、ほとんど1時間おきに目が覚めました。せめて扇風機でもないと、ゆっくり眠ることもできそうにありません。弁護士さんにお願いしようと心に決めました。

その日は、3時過ぎにようやく眠れたのですが、扇風機が回った涼しい部屋で寝ている夢を見ました。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。