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ウーマンラッシュアワー村本さんと赤ワイン

ウーマンラッシュアワーの村本さんのライブを見に行った。(写真は村本さんのスタッフさんのtwitterから借用)

「JAZZトランぺッターの伊勢崎賢治さんが軽快なリズムでジャズを生演奏しては憲法9条について叫び、それに対してウーマンラッシュアワー村本がお花畑すぎる質問を繰り返す45分。」

とあったので、興味本位で友人と出かけてみた。伊勢崎賢治さんはどこかで見たことがあるおじさんだなぁ、近所の居酒屋かな、と思ったが、しだいに思い出す。TVでみたんだ。国際紛争の解決人として有名な人。

村本さんは最初から赤ワインを空けていた。村本さんと伊勢崎さんの間におかれた小さな机に、黒いラベルのちょっと洒落た赤ワインをボトルのまま置き、合間にラッパ飲みしていた。

水を飲むみたいに赤ワインを飲んでいた。

曲をやったら掛け合いをする、の繰り返しで、会場がだんだん乗ってくる。

伊勢崎さんの曲は詩的で少し難解だ。トランペットの音は大きく、切なく、会場に響く。ドラマ―が絶妙な間でリズムをいれていく。

村本さんが言う。「このおじさんはね、ツイッターでも憲法9条についてだけずっと語っているんですよ。」。何度も伊勢崎さんの方に寄っていって、肩を左手で触る。切れ長の目のふちは赤くなっている。斜め45度をみながらしゃべっている。

「憲法をね、憲法9条についてね、語ったらね、そっち側の人間かと言われるんですよ。この国のね、基本の憲法についてね、意見を言ったらおかしいんですか。改憲とかどっちでもいいんです。ちゃんと国民一人一人がね、理解して納得して意見を持ちましょうよ、ってことなんです。」

斜め45度。赤い目尻。きつね目で彼は酔っぱらっている。片手に赤ワイン。

途中で何回も机からボトルが落ちる。ガチャン。座っている場所からは見えなかったけれど、赤い液体が床にこぼれているのかもしれない。

村本さんは、政治についてしゃべったらあっち側の人間と言われる空気を誰より感じ取る繊細さを持ちながら、挑んでいる。彼自身が彼自身と戦っている。

会場を笑わせたあと、笑い声のあいまに1回だけ水を飲んだ。そして、後ろにいたマネジャーに何やら進行について目くばせをした。

酔ってなんかいない。冷静なのだ。

彼は本気で「この国」の「空気」を笑いで変えようとしている。「あっち側」の芸人になる危険を冒しながら。何やら壮大すぎる使命に身を投げ出す姿に、赤ワインは彼の血を連想させる。

それは単なるヒロイズムとは思えなかった。自己陶酔とも思えなかった。ライブには、一人の人間の確かなる葛藤があり、情熱があり、情けなさがあり、悲しさがあり、絶望があった。人生をかけて小さな希望をつむごうとしている。

彼はコメディアンである。私は彼のやることを信頼することにした。これからも見にいこう。次もまた赤ワインを飲んでいるだろうか。


村本大輔twitter https://twitter.com/WRHMURAMOTO
伊勢崎賢治twitter https://twitter.com/isezakikenji

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