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魁!!テレビ塾 第18訓『水曜歌謡祭』
【注記】
これは、学研「GetNavi」2014年2月号〜2017年5月号に連載していたテレビ評コラムの再録です。番組データ、放送内容はすべて掲載当時のものです。私の主張や持論も現在では変化している点が多々ありますが、本文は当時のまま掲載し、文末に2023年現在の寸評を追記しました。
力みまくりの『水曜歌謡祭』に
漂うあやういバッドトリップ感
押忍!! ワシが当テレビ塾塾長の福田フクスケである!
力み過ぎてて見ていて心配になるものといえば、フジテレビの男性新人アナウンサーか、志垣太郎のこめかみの青筋だが、今もっとも力みまくっている番組といえば、『水曜歌謡祭』で間違いないだろう。
4月15日放送の初回冒頭から、和田アキ子が歌う『私がオバサンになっても』で幕を開けるという、吊り橋効果かショック療法を狙っているとしか思えないトリッキーなスタート。西川貴教×松崎しげるや、華原朋美×JUJU×宇崎竜童といった実力派ミュージシャンを異色コラボさせ、浅倉大介や田島貴男など普段あまりテレビに出ない大御所をフィーチャー、果てはディズニーメドレーや宝塚歌劇団まで投入するという、パンドラ…もとい、おもちゃ箱をひっくり返したような見境ない…いや、夢のような百鬼夜行…じゃなかった、オールスター状態だった。
その祝祭感と高揚感と狂騒感は、年末恒例の『FNS歌謡祭』そのままだが、この勢い、果たしてレギュラー放送で毎週やって大丈夫か。しかも生放送だぞ。テンションもつのか。バテちゃわないか。
しかし、これ見てワシは思ったね。生バンド演奏や生中継は、予算も手間もかかるはず。現場はバタバタでテンパってるし、事故を起こすリスクも怖い。にもかかわらず生放送にこだわるのは、テレビ業界人にとってやっぱり生放送って、テンションぶち上がってアドレナリンが吹き出るドラッグみたいなもんなんだろうなあ。
でも、低迷と言われるフジテレビが今そのお祭りを毎週やろうとしているのは、戦時中の兵士がヒロポンに手を出すみたいで心配だ。いつの間にかバッドトリップに陥らないことを祈るばかりである。
◆今月の名言
(中継先の三上アナに向かって)「噛んだ割に元気ですね」
(byアンジャッシュ渡部)
『FNS歌謡祭』のスタッフが手がける、フジテレビの21年ぶりとなる生放送音楽番組。森高千里と司会を務めるアンジャッシュ渡部のソツのない進行ぶりは、恵俊彰の後釜に収まる器を感じさせた。
(初出:学研「GetNavi」2015年7月号)
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【2023年の追記】
私にはかねてより「テレビマンにとっての生放送は、あえてスリリングな状況に自分たちを追い込みアドレナリンを出すことで、衰えたバイタリティを一瞬取り戻した気分になるための嗜癖行為である」という持論があり、Twitter(Xなんて言ってやらないんだから!)でもたびたび同じ内容をツイート(ポストなんて絶対言ってやらないんだからね!)しているのですが、おそらくこれがその初出だったと思われます。
案の定というかむべなるかなというか言わんこっちゃないというか、この年の4月に始まった『水曜歌謡祭』は、わずか5ヶ月、たった12回で息切れして終了し、同じ森高千里とアンジャッシュ渡部がMCを務める『LOVE MUSIC』という『ミュージックフェア』的な収録番組に変更を余儀なくされました。
しかし、その後もフジテレビは12月恒例の『FNS歌謡祭』だけでは飽き足らず、毎年夏にも定番化させ、とうとう2021年には秋、2022年には春にもぶち込んでくるという暴挙に出ました。さすがに疲弊したのか、2023年は再び夏と冬のみの2回体制に落ち着きましたが、私の「生放送=ヒロポン」説に従うなら、ここ数年のフジテレビは『はだしのゲン』に出てくる目元がバッキバキにキマったヒロポン常習者のような、非常に危険な末期状態にあるのかもしれません。
まあ、ちょっとまじめな話をすれば、レギュラー番組なき今、定期的に生放送の音楽特番をやるのは、音楽班における生放送のノウハウやスキルを絶やさず継承させるために必要なことなのでしょう。
でも、もはやフジテレビだけでなく、『うたコン』だの『音楽の日』だの『ベストアーティスト』だのと、各局が常にどこかしらで生放送の音楽特番を乱立させているこの状況は、私にはやはりテレビの断末魔に聞こえてしまうのです。
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