魁!!テレビ塾 第19訓『みんなのニュース』
“テレビの人質”をソツなくこなす
ネット識者の空気のような存在感
押忍!! ワシが当テレビ塾塾長の福田フクスケである!
柄本佑(兄)と柄本時生(弟)をはっきり区別するのが難しいように、近年は“情報番組”と“報道番組”の線引きが限りなくグズグズになっている。フジテレビの“報道の顔”安藤優子が、夕方の『スーパーニュース』を降板し、春からお昼の『直撃LIVEグッディ!』に異動したのは象徴的だ。
最近、この手の番組で顕著なもうひとつの傾向が“ネット知識人枠”の設置だろう。日テレの『スッキリ!!』では、この春から宇野常寛やはあちゅうのような“ネットの有名人”がレギュラーに起用されているし、前述の『スーパーニュース』の後継番組『みんなのニュース』でも、津田大介がコーナーを持っている。
彼らの役割は、端的に言って“テレビの人質になること”だと思う。ネットでは、テレビはすぐに「マスゴミ」と叩かれ敵視される。だから、“ネット側の理解者”を自陣に招き入れ、彼らの言い分を代弁させることで、テレビ叩きの溜飲を少しでも下げたい、という局側の狙いを感じるのだ。
ただ、津田氏をはじめとするネット陣営もしたたか。“テレビ的なお約束”からは距離を置き、のらりくらりと振る舞っているように見える。求められる“テレビの人ごっこ”を演じつつ、本音は主戦場であるネットで吐けばいいや、という余裕が感じられるのだ。
そのスタンスは手堅いけど、何の化学反応も生まれないのは正直つまらない。「子供は汚いから嫌い」「(長嶋一茂に)長嶋家はなんでダメだったんですか?」と無邪気に発言した『ワイドナショー』の古市憲寿のように、空気を読まずに大事故を起こす“ネットの人”が、もっと出てきてほしい。
◆今月の名言
フジテレビは、ネットとスマホ向けのニュース専門メディア「ホウドウキョク」を立ち上げ、『みんなのニュース』とも連動。「ネットとテレビの相互乗り入れを意識してます」アピールが盛んだ。
(初出:学研「GetNavi」2015年8月号)
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【2023年の追記】
ドラマやバラエティと違って、帯の報道番組や情報番組がどんな改編を経てどういう座組で放送されていたかってほとんど回顧されないので、案外こうした当時の記録って貴重になるのかもしれません。
この時期のテレビは、SNSを脅威として意識するあまり、逆に擦り寄りすぎていた印象があって、今のほうがちょうどいい共存の仕方を見つけたように感じます。
「ホウドウキョク」も、そういえば確かにあったのに、いつの間にか聞かなくなりましたね。ネットオリジナルの放送局やプラットフォームって、雨後の筍のように出てきてはすぐに名前が変わったりサービスが統廃合されたりしてせわしないし、アーカイブがまともに残らないのは放送史にとって非常によくない損失なんじゃないでしょうか。
と同時に、文中でも触れていますが、報道番組がみるみるうちに形骸化していって、芸人がコメンテーターの座に居座るようになり、やってることが情報番組と変わらなくなっていったのも、振り返ればこの時期だったなと思い出しました。
今思えば、それって安倍政権の時期と完全にかぶっていたことに気づくわけで、ドラマ『エルピス』で描かれていたような報道のスポイルや骨抜きって、本当に行われていたんだろうなとそら恐ろしい気持ちになるのでした。
あと、今思うと柄本佑と柄本時生はちっとも似ていませんでした。
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