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「もったいない」ふくしまの桃を農家の想いとともに商品化

「ふくしまおこしびとPlus」ではふくしまの地域づくりキーパーソンや関係人口の方に、福島の魅力や想いをお話いただきます


齋藤由芙子(さいとう ゆうこ)さん

Profile
福島市生まれ。田舎に魅力を見出せず仙台の大学へ。在学中に音楽活動を開始。大学卒業後、テレビ局ディレクターとして企画・取材・撮影に携わっていたが、本気で音楽活動するためバイト生活に切り替える。ゴスペルを指導しながら、飲食店の運営に携わる。
東日本大震災を機に地元の福島へ。ゴスペルで元気になれる企画を進めるうち、まちづくりに興味を持ちNPO事務局へ勤務。福島の魅力を取材するうちに完熟桃に出会い、株式会社ももがあるを設立。


「ももがある」を創業したきっかけをおしえてください。

ある若手農家さんを訪ねた時に、畑に山のように積んである桃が目に入りました。味はおいしいけれど、出荷基準が厳しくお金にならないので、格安でジュース加工に出すか、配るか畑の肥やしにすると言います。例えば、少し傷があったり、葉っぱが触れて色が違ったり、枝の跡があるだけで出荷できなくなってしまいます。さらに、完熟桃は甘みがのって一番食べ頃なのに、配送時に柔らかくなって出荷に耐えられないからNG。こんな、流通業者の都合や仕組みの問題を理不尽だと感じました。
その時に農家さんが「これを使って何かできたらいいのにな…」とつぶやきました。私もこんなにおいしそうなのに「もったいない」「なんとかしたい」と思いました。
一般的な出荷桃は、輸送に耐えられる硬さが必要なので早摘みし、選果します。その後市場へ出され、そこでやっとお店や消費者のもとへ届くので、収穫からは最低2~3日経ってしまいます。だから、完熟桃は格安で加工品にしたり、廃棄されたりすることが多いんです。それなら産地ですぐに加工すれば完熟桃の良さを活かせるのではないかと考えました。
ギリギリまで樹に成らせて、できるだけ甘い状態で収穫し、スピーディーに商品化すること。それにより、ロスを無くし、従来の加工品の材料に出すより何倍もの価格で買い取り、農家さんに還元することができます。
 
まず試作をしようと加工場を探しました。当時福島市内に加工場はほとんどなく、ようやく無添加で漬物を作っていた会社と出会いました。震災の影響で廃業するとのことで、廃業前のぎりぎりのタイミングで場所をお借りすることができ、試作ができました。始めはピューレに挑戦しました。でも桃は空気に触れるとすぐに茶色く褐変するので、うまくいきませんでした。せっかく甘みが濃く、素材が良い桃なので、添加物など、手を加えすぎるのは嫌でした。
その時試作で協力してくれた漬物会社が、震災時の補助金で購入した3Dフリーザーという特殊な冷凍機を持っていました。あるとき、作業が終らずカットした桃をその冷凍機を使って真空状にして凍らせ帰宅しました。翌日、冷凍桃を食べてみてびっくり。香りも食感もほぼ生桃でした。
加工する場所が見つかったことや冷凍機があったことなど、いろんな偶然が重なり、品種ごとに完熟桃を瞬間冷凍した「ももふる」が誕生しました。こんなにおいしいなら絶対に売れる。農家さんにも還元できる。他に場所もなく、誰もやる人がいないならと、漬物会社工場を譲り受け、「株式会社ももがある」という会社を立ち上げました。


ふくしまの桃を冷凍した「ももふる」

ふくしまの桃への想いをおしえてください

福島は桃の生産量が全国2位です。
東日本大震災前は福島が桃どころだとほとんど知られていませんでした。PRしなくてもそこそこ売れていたので必要なかったのだと思います。震災で放射能の風評被害があり、西日本に格安で桃が流出したことで、福島の桃のおいしさが西日本にも伝わりました。それでも、生産量が第1位の山梨の桃にくらべて福島の桃の価格は5分の1です。
震災後、福島の桃農家さんは協力し、いち早く樹体洗浄やモニタリングを行い、安全で質の高い果樹栽培を続けてきました。さらに、震災を機に家業を継ぐため就農を決めた若手農家もいます。どこよりも安全で本気でおいしい桃を作っている農家さんが、たくさんいるのは地元の誇りです。


今後取り組みたいことはありますか。

福島は桃の種類が50品種以上もあります。見た目はもちろん、甘さや食感、香りが違います。県外でいろんな人と話すと、「福島の桃は甘みが濃い」「硬めなのに甘い」と言ってもらえることが多いです。さらに「こんなに品種があるなんて知らなかった」「いろんな品種を食べてみたい」など、品種を打ち出すことで、もっと桃に興味を持ってもらいファンを増やすことができることが分かりました。
できるだけ全国、全世界の人々に福島の桃を届け、味わってもらえるよう尽力したいです。
また、桃は果実だけでなく皮や種も活用できます。目指すは現代型の循環農業です。
おいしく食べてフードロスを無くし、アップサイクルする仕組みを見出し、いつか桃のテーマパークを作りたいです。

株式会社ももがある
〒960-8156 福島県福島市田沢字木曽内前6-8
Tel. 024-547-3888
https://momogaaru.co.jp
[オンラインショップ]
https://www.momogaaru.co.jp/shop/


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